地域包括ケアシステム政策提言(全文)

公明新聞:2014年8月1日(金)付

公明党地域包括ケアシステム推進本部が31日、政府に申し入れた提言全文を紹介します。

2025年の超高齢社会に備えて、安定的な社会保障財源の確保のため社会保障・税一体改革が進められており、とりわけ消費税増税による国民負担を求めたところである。

この財源を活用して、社会保障施策の拡充を進めることとしているが、同時に、持続可能な制度とするためには給付の重点化・効率化も避けて通れない課題である。

超高齢社会に対応するための医療・介護・予防・住まい・生活支援が住み慣れた地域で一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を進める上で、介護保険法等の趣旨に基づき、高齢者自身が必要な支援・サービスを選択し利用しながら、要介護状態にならないための予防や能力の維持向上に取り組むことが特に重要である。

そのためには高齢者自身がセルフケアに努めることはもとより、こうした高齢者を支える地域の多様な主体による情報の提供をはじめ介護・予防サービスの提供体制を計画的に整備していかなければならない。

地域の医療・介護等の公助や共助の体制整備とともに、自助や互助の体制強化を含めた地域包括ケアシステム構築に向けて、今後、関係者間の意識の共有を図りながら国民運動を展開することが必要である。

公明党地域包括ケアシステム推進本部では、この国民運動を基盤とする地域包括ケアシステムの全自治体での構築を目指し、政策課題の調査検討、関係団体からのヒアリング、全国の都道府県・市町村議員との懇談、現場の実態調査などを基に、今般、政策提言をまとめたところである。

政府において、その内容を十分に踏まえ、特段の取り組みを求めるものである。

1、財源の確保について

(1)平成27年度介護報酬改定と予算の確保

平成27年度の介護報酬改定に当たっては、全国的な地域包括ケアシステム構築のため、介護職員の処遇改善や上昇傾向にある物価、医療・介護の連携の確保などを勘案の上、着実な引き上げを図ること。また、サービス利用者の自然増にも対応するため必要な予算措置を行うこと。

(2)都道府県に設置される基金の財源確保


消費税増収分を活用した都道府県の基金について、医療分、介護分について必要な財源を確保すること。その際、介護分については、介護基盤整備や人材確保、その他地域包括ケアの推進に必要な財源確保を図ること。また、その配分に当たっては、地方自治体の取り組みと密接に連携の上、民間事業者への配分にも留意すること。

2、必要な人材確保について

(1)地域における人材確保のための指針の見直し

都道府県で集約される2025年度までの介護従事者の必要数について全国レベルの数字を公表するとともに、医療・介護人材の確保について国の「人材確保指針」の見直しを行い、国家戦略として人材の確保に取り組むこと。

また、養成施設の在り方を含め供給サイドからの人材養成の総点検を行い、必要な対応を行うこと。その際、介護福祉士の資格取得の在り方については、介護人材の中核的役割を踏まえつつ資質の向上と福祉の拡大の両面から検討を進めること。さらに、地域包括ケアのまちづくりを進める地域のリーダーとして社会福祉士の積極的活用を図ること。

(2)学校教育における介護の取り扱いやイメージアップの取り組み


介護の仕事の深さや尊さを学んだり、現場での体験学習など、学校教育の一環として介護という仕事に従事することへの興味を深めるような取り組みを進めること。

また、介護人材等のイメージアップを図るために、TVドラマの活用や例えばヘルパーの名称をケアサポーター等に改名するなど大胆かつ斬新な取り組みを実施すること。

(3)介護職員の処遇改善とキャリアパスの構築

平成24年度に導入された介護職員処遇改善加算について、介護事業者の事業形態に即して検証を行い適切な改善を行うこと。その際、介護従事者のキャリアパスを構築するため経験年数などの評価と併せて、それぞれの事業所ごとの人件費割合など総合的な評価も検討するとともに、その情報の公表も図ること。

(4)地域における多様な人材登用

今後、地域支援事業として新しい総合事業が展開されることとなるが、住民主体の多様な生活支援・介護予防サービスなどのサービス従事者については、地域包括ケアシステムを支える重要な人材であり、市区町村の現場における多様な人材登用を可能とすること。

また、介護人材の入り口であるヘルパーの養成について、サービス従事の前提とされている初任者研修の在り方についても検討を行うこと。

(5)有償ボランティアの活用やソーシャルビジネスの積極的な展開

地域住民が介護予防や生活支援に担い手として意欲的に取り組むことができるよう、有償ボランティアの活用やソーシャルビジネスの積極的な展開を図ること。

この場合、ボランティアポイント制度の導入や労働法制の適用などの環境整備を図ること。

(6)地域におけるリハ専門職等の活用

地域包括ケアシステムを支える人材として、リハビリ専門職の役割が重要であり、市区町村が行う緩和された基準によるサービスや地域リハビリテーション活動支援事業などにあっては、薬剤師、PT、OT、STなどに加え鍼灸マッサージ師など現に介護、予防現場でサービスに従事している多様な人材の活用を進めること。

3、サービスの確保について

(1)地域包括ケアシステムを支える基幹的サービスの拡充

在宅医療・介護を支えるサービスとして、定期巡回随時対応型訪問介護・看護、複合型サービス、小規模多機能型居宅介護サービス、さらには訪問看護などのサービスが必須であるが、市区町村ごとに見るとサービス提供体制には大きな格差が認められる。今後、関係者間でのサービスの普及啓発を図ることが求められるが、現在の包括報酬の単価設定について、経営実態調査などを踏まえ適切に見直すこと。また、巡回型の訪問サービスの実施に当たっては、オペレーター配置を集約できるような仕組み等を検討すること。 

(2)新しい地域支援事業の取り組み


新しい地域支援事業については、総合事業として再編されることとされているが、現行の予防訪問介護、通所介護に加え、多様なサービス類型の設定に当たっては、市区町村の実情に応じた柔軟な対応ができるよう設定すること。この場合、市区町村や地域包括支援センターにおける業務が増大しないよう、簡便な実施方法に留意すること。また、既存のサービスが必要な高齢者に対しては、これまでと同様のサービスが提供できるように配慮すること。

(3)基本チェックリストの適切な活用


基本チェックリストで対象者をリストアップする場合、モラルハザードが起きないよう適切なアセスメントに留意すること。また、可能な限り、多様な主体によるサービスが利用できるようなシステムを構築すること。なお、基本チェックリストの活用が進むことで、認知症の高齢者など介護サービスが必要な高齢者に対して要介護認定へのアプローチを阻害しないよう配慮すること。

(4)訪問サービスの適切な評価

集合住宅への訪問サービスの評価について、診療報酬で行われた全国一律での報酬の急激な減額が行われることのないよう、それぞれの地域における訪問サービスの実態に即して適切な評価とすること。また、長距離の移動を伴う訪問サービスに対する配慮も検討すること。なお、集合住宅に係る診療報酬改定の影響について医療の撤退などの実態を把握の上、適切な対応を図ること。

(5)市民後見人や権利擁護事業などの取り組み

認知症高齢者の増加に対応するため高齢者の資産の適切な管理など成年後見制度の取り組みについて、特に市民後見人の育成とその活動を支援する地域の権利擁護機関の整備を促進すること。

また、介護や医療の提供と同時に、生活困窮者など日常生活全般にわたる支援が必要な高齢者等のため社会福祉協議会やNPO法人などの支援グループが参画する協議体により多様なサービスの提供体制の整備を図ること。

4、認知症高齢者対策の推進について

(1)認知症疾患医療センターの整備促進

認知症施策の基本は、早期からの適切な診断と対応であり、そのため国においては国立長寿医療研究センターでの認知症研究を強力に進めると共に、地方においても鑑別診断を行う認知症疾患医療センターの整備を着実に進めること。また、基幹型センターの整備に加え、二次医療圏ごとの地域センターの整備を早急に進めること。

さらに、地域の診療所型の整備も進めながら、全国500カ所の整備を図ること。

(2)医療従事者の認知症対応力の向上

認知症サポート医の養成やかかりつけ医の認知症対応力の向上を図るため、認知症ケアに携わる医療従事者の研修を計画的に実施し、5万人のかかりつけ医の養成を図ること。また、認知症ケアに携わる介護従事者の研修についても、計画的に実施するため国の支援を強化すること。

(3)認知症初期集中支援チームなどの設置

新たな地域支援事業の包括的支援事業に認知症施策の推進を位置付け、認知症初期集中支援チームや地域において支援機関との連携や相談業務に当たる認知症地域支援推進員の全市区町村への配置を進めること。

さらに、認知症への理解を持ち、手助けを行う認知症サポーターの養成を、全国的な市民運動として展開すること。

(4)地域における認知症高齢者、家族への支援

認知症及びその家族に対する地域の支援体制を整備するため、地域の既存資源を活用して、「認知症カフェ」の設置や、見守りネットワークや徘徊SOSネットワークの構築などを新たな地域支援事業に位置付け全国的に進めること。その際、無線を活用した地域BWAとの連携も考慮すること。

(5)介護報酬上の取り扱い


認知症対応型共同生活介護における医療連携や夜間ケア体制について報酬上の評価を適切に行うこと。また、認知症対応型通所介護などの各サービス事業所について、認知症に関連した各種加算の評価を適切に見直すこと。

5、高齢者の住まいの確保について

(1)サービス付き高齢者向け住宅などの適切な整備

サービス付き高齢者向け住宅等の集合住宅については、市区町村の医療・介護提供体制やまちづくりとも整合性を図りながら、適切に整備されることが必要である。住宅の登録権者が都道府県、サービスの保険者が市区町村であることから、都道府県の高齢者居住安定確保計画の策定に当たっては、市区町村との協議が十分行われるような制度的な対応を図ること。また、サービス付き高齢者向け住宅の適切な運営確保のため、サービスのガイドラインを策定すること。

(2)低所得の高齢者の住まいの確保策の推進

低所得の高齢者の住まいの確保について、地域優良賃貸住宅制度などを活用して各自治体で家賃の減額措置が行われるよう制度の拡充を行うこと。また、地域の空き家の改修による安価な共同住宅の整備、さらに社会福祉法人や医療法人が運営するサービス付き高齢者向け住宅については、地域貢献策としてこうした取り組みが進むよう環境の整備を行うこと。

(3)集合住宅における外部サービスの適切な評価

高齢者向け集合住宅における外部の介護サービスについては、訪問系サービスの減算する仕組みとなっており、定期巡回・随時対応型サービスや複合型サービスについても検討が進められているが、地域包括ケアシステムを支える重要なサービスであり、現在、全国的に整備が進められようとしているサービスであり、経営実態を十分勘案の上、適切な評価を行うこと。

6、自治体における運営体制の確保について

(1)医療・介護連携のための都道府県の支援体制の整備

今後、全国的な地域包括ケアシステムを構築する上で、都道府県の役割は極めて大きい。地域医療ビジョンに基づいて医療提供体制の改革と同時に、医療・介護の連携体制の整備が必要であり、都道府県域における医師会等の関係団体との調整、介護人材の確保や養成、生活支援コーディネーターなどの地域づくりの専門家の養成、さらには、小規模町村などへの保健師、リハ専門職などの広域派遣調整など、広範な取り組みが必要である。

県に設置される医療・介護の基金の活用を含め、地域包括ケアシステム構築のため都道府県の積極的な取り組みを進めること。

(2)在宅医療・介護の連携拠点の整備

今後、全地域医療構想(ビジョン)においては、市区町村ごとの在宅医療の必要量を示し、地域における在宅医療・介護サービスの提供体制を整備することとなる。こうした取り組みを行うためには、市区町村と各医師会が連携し、地域包括ケアシステムの実現に向けた在宅医療・介護連携拠点の整備が不可欠である。このため、新しい地域支援事業の包括的支援事業に医療・介護の連携事業を位置付け、全ての自治体による取り組みを進めること。その際、医療と介護の共通用語の整理など、情報連携環境の整備にも取り組むこと。

(3)医療・介護連携のための研修などの取り組み


地域の医療と介護の連携のためには、医療スタッフ、特に医師を中心とした研修が必要であり、多職種による在宅医療推進のための研修事業を着実に実施すること。また、地域における医療・介護サービスの連携を進めるためには訪問看護ステーションの機能が重要であり、次期報酬改定に当たっては機能強化のため必要な評価を行うこと。その際、地域の実状に応じて、柔軟な看護師の配置に留意すること。

(4)生活支援コーディネーターの配置と協議体の設置

医療保険における在宅医療、介護保険制度による介護給付に加え、今後は再編される総合事業における介護予防・生活支援サービスにおいて多様な主体によるサービスが地域において包括的に実施される必要がある。特に介護予防・生活支援サービスについては、地域資源の開発やネットワークの構築、また高齢者ニーズと取り組みのマッチングなどの機能が必要であり、そのため生活支援コーディネーターの配置と地域ケア会議などの協議体の設置が重要である。こうした事業を新しい地域支援事業に位置付け、全ての自治体での取り組みを進めること。

(5)地域包括支援センターの機能強化


総合事業における介護予防・生活支援サービスにおいて多様な主体によるサービスの地域展開の拠点、中枢機能が地域包括支援センターであり、現在の三職種の人員配置では、対応できないことが想定される。地域包括支援センターの機能を強化するため必要な人員の配置基準とするとともに、必要な活動費などについて財源措置を行うこと。

(6)協議体による総合的な支援体制の整備


高齢者の地域生活を支援するためには幅広い支援体制が必要であり、見守りや日常生活支援とともに、健康や安全の確保、さらには資産を管理する成年後見制度や権利擁護事業など、協議体の活動の中で総合的な連携体制を確保すること。また、併せて全国的に後見支援センターなどの整備を進めること。

7、その他の施策の展開について

(1)保険料や利用者負担の設定

一定所得以上の高齢者の保険料2割負担の導入に当たっては、高齢者の世帯の生活実態を十分勘案の上、慎重な検討を行うこと。また、低所得者の一号保険料の軽減策の強化については、調整交付金の調整の在り方も含め、各自治体で取り組みが進むよう指導を行うこと。さらに、新しい総合事業で取り組まれる訪問型サービスや通所型サービス、その他の生活支援サービスの利用者負担についても、高齢者の生活実態に応じて柔軟な設定ができるよう配慮すること。

(2)健康・リハビリのまちづくり

今後は、高齢者の健康増進や介護予防、さらにリハビリテーションを効果的かつ効率的に進めることがますます重要になる。その際、高齢者が一人でも安心して動けるヘルシーロードの整備など、日常生活の中で自然に健康増進や介護予防、リハビリテーションが進められるまちづくりに積極的に取り組むこと。

(3)高齢者のセルフマネジメントの推進

高齢者のセルフマネジメントを推進するため、老人保健事業で行われている「健康手帳」を参考に「介護予防手帳(仮称)セルフケアファイル」の活用を進めること。この場合、データヘルス事業やマイナンバー制度の進展を視野に入れ、ICTの利活用に留意すること。

(4)個人情報保護法などの見直し

データヘルスの展開、地域における要支援者の把握、効果的な支援体制の構築を進める上で、個人情報保護法や各自治体の個人情報保護条例が障壁となっている場合が多い。関係者による情報の共有のための体制を早急に整備すること。

(5)新しい地域支援事業のガイドラインの見直し

新しい地域支援事業の実施に当たっては、移行期の平成29年度までは、必要に応じて毎年のガイドラインの見直しも検討すること。

(6)介護サービスにおける成果報酬の検討

介護保険制度において、介護サービス事業者の介護度や状態の改善等の実績に対して、取り組みを適切に評価するため、成果報酬などの仕組みの導入について検討を進めること。

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