主張不登校経験者の進路

公明新聞:2014年7月15日(火)付

進学・就職の不安克服を
“切れ目のない支援”が不可欠

文部科学省は先週、不登校を経験した中学生の5年後の進路などを追跡調査した結果を公表した。調査は、2006年度の1年間に年間30日以上欠席した中学3年生を対象に行ったものだ。

調査によると高校進学率は85.1%となり、前回調査(1993年度)の65.3%から約20ポイント増加した。高校中退率も前回の37.9%から14%に改善され、大学・短大などの進学率も22.8%と前回の約3倍に達している。

この要因として、心の悩みの相談に応じるスクールカウンセラーの配置に加え、不登校生徒も高卒資格を得やすい通信制高校の増加など受け入れ態勢が整ってきたことが指摘されている。さまざまな支援により、進学の機会が広がっている傾向は望ましい。

しかし、進学率が向上する一方で、残された課題も少なくない。

不登校を経験したことのない同世代の高校進学率は98%、大学などの進学率は約6割で、その開きは大きい。また、不登校経験者の高校中退率は全国平均の7倍を超える。

就職分野の情勢も厳しい。調査した人のうち、正社員として働いている人は9.3%に過ぎない。前回調査の半分以下だ。

不登校になった原因は、いじめを含めた「友人との人間関係」や「勉強についていけなかった」など複雑だ。不登校を乗り越えて進学先や就職先を決める段階にまでたどり着いても、人間関係に不安を感じたり、社会になじめなかったりする悩みを抱えている場合が多いため、進路につまずくとみられている。

自立を後押しする対策の拡充が欠かせない。

手掛かりの一つが、卒業後の“切れ目のない支援”だ。

小中学校や高校に在学中の生徒は教師らからの支援を受けられるものの、卒業や中退によって学校を去ってしまうと、その接点が途切れてしまいがちだ。

こうした課題の克服に取り組んでいる自治体もある。東京都西東京市が開設している不登校ひきこもり相談室では、18歳までの在住・在学者を支援の対象にしている。不登校経験者が高校を中退後に、この相談室の支援を受けて再入学を果たしたり、就職先を見つけたケースもあるという。参考になる事例である。

文科省は来月にも有識者会議で、不登校対策の検討を始める予定だ。不登校に悩む子どもたちが、自分の将来に希望を持てる政策を打ち出せるよう議論を深めてほしい。

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