閣議決定 どう見るか

公明新聞:2014年7月3日(木)付

「平和の党」の役割果たした「蟻の一穴」論は杞憂にすぎぬ
静岡県立大学グローバル地域センター 小川和久特任教授

集団的自衛権に関する公明党の取り組みは、日本の平和と繁栄にとって大いにプラスになったと評価したい。閣議決定に至る議論には大変なエネルギーを要したと思うが、それに見合う大きな役割を公明党は果たした。

国家、国民に対する責任は、与党であるが故に一段と重い。与党としての公明党の存在意義の一つは、連立政権の政策の完成度を高めること。公明党は今回も自民党を大きく動かしてくれた。

当初、安倍晋三首相の姿勢には前のめりの印象があったが、閣議決定は安定した仕上がりとなった。公明党が「平和」という立脚点を外さず、憲法との規範性、政府解釈との論理的整合性などを厳格に問い続けてきた結果だ。

中国の動きがアグレッシブ(活発)になるなど、日本を取り巻く安全保障環境は確かに変わり、それに対する日本国民の危機感も増している。日本が成熟した民主主義国家であれば、国家の安全を図る上での課題を放置せず、解決に動くのは当然のことだ。私は日米同盟を活用しつつも、可及的速やかに国家安全保障の枠組みを作り上げてほしいと切望してきた。その枠組みが、今回の閣議決定によってできあがった。喜ぶべきことだ。

集団的自衛権の議論について「拙速」と批判する向きもあるが、日本人は「拙速」という言葉を誤解している。

古代中国の戦略の書『孫子』も「巧遅は拙速に如かず」としており、今回の迅速な動きは戦略の要諦である「拙速」を踏まえたものだ。素早く枠組みを作って国家の安全を高めれば、あとは丁寧に中身を仕上げるだけだ。閣議決定後の法制整備には、時間をかけて議論してほしい。

閣議決定を受けて、「拡大解釈が進むのでは」との「蟻の一穴」論が出ているが、杞憂にすぎない。拡大解釈に対する究極の歯止めは、公明党が閣議決定に盛り込ませた専守防衛を貫くことだ。

安倍首相は5月15日の会見で「自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘に参加することは、これからも決してない」と言ったが、そもそも軍事力としての自衛隊の構造は、他国に本格的な攻撃を加える能力を欠いたものだ。日米同盟による役割分担もあって、自衛隊の構造は憲法第9条を絵に描いたような専守防衛の姿をしている。つまり、今後も日米同盟を基軸として専守防衛を貫くことによって、必要以上の軍事力を海外で展開することはあり得ないということだ。

今回の閣議決定から見えてくるのは、「平和の旗」を高く掲げ続けている公明党の姿である。日本が世界から信頼される“真の平和国家”に進化していくうえでも、与党協議における公明党の存在は大きかった。それだけに、閣議決定された今こそ公明党の国会議員は、協議の経過と内容について全国を回って丁寧に説明してほしい。公明党の党員、支持者は誰にもまして真剣に「平和」について考えているのだから。

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