主張脱法ハーブ 健康被害や重大事故の病根

公明新聞:2014年6月28日(土)付

危険性を周知し意識啓発を急げ

脱法ハーブなど薬物の吸引が原因とみられる交通事故が後を絶たない。悲惨な事故をなくしていくために、あらゆる手立てを尽くさなければならない。

東京・豊島区のJR池袋駅近くで乗用車が歩道に突っ込み、8人が死傷する事件が起きた。運転していた男は脱法ハーブの使用を認めており、警視庁は自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の容疑で、この男を送検した。

脱法ハーブは、覚せい剤や大麻と似た作用のある化学物質を植物片(ハーブ)にまぶしたもので「合法ハーブ」や「アロマ」などと称して販売されている。使用すると、意識障害やけいれんなどを起こし、最悪の場合は死に至るケースもある。健康被害や重大事故の病根と言える。

警察庁のまとめによると、脱法ハーブを含む脱法ドラッグ関連の事件は、2009年から11年までは年間10件未満だったが、昨年は125件に急増。摘発された人数は176人に上る。このうち交通事故を起こしたのは40人で、前年の19人から倍増している。

政府は脱法ドラッグの根絶に向け、化学構造が似た物質群を一括して規制する「包括指定制度」の導入や、麻薬取締官の権限強化などの対策を進めている。

今年4月からは指定薬物の所持・使用なども禁止となった。脱法ドラッグの危険性と合わせて、売る側だけでなく買う側も処罰対象になったことを周知徹底し、購入・使用を防いでもらいたい。

一方、規制の網は広くなったが、指定薬物かどうかの鑑定は時間がかかり、迅速な摘発には課題が残る。脱法ドラッグは簡易な検査方法が確立されておらず、販売や使用の疑いが濃厚であっても現行犯逮捕はできない。このため、鑑定結果が出るまでに容疑者に逃げられたり、新たな事件を起こす可能性もある。

脱法ドラッグの取り締まり強化とともに、指定薬物の有無を短時間で鑑定できる方法の研究開発を急いでほしい。

脱法ドラッグは若者を中心に乱用が広がっている。学校教育での意識啓発が重要だ。ただ、小中高教員の約3割が脱法ドラッグの有害性を「はっきり説明できない」と回答した調査もある。教員向けの研修などを充実させ、子どもたちに正しい知識を浸透させる必要がある。

薬物は依存性が強く、再犯も多いのが特徴だ。使用者の家族が相談しやすい体制を拡充するなど、薬物依存から抜け出す仕組みも強化しなければならない。

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