主張働き方の改善 心身むしばむ長時間勤務

公明新聞:2014年6月19日(木)付

官民一体で過重労働なくす知恵を

労働者の働く時間を巡る論議が高まっている。政府は、勤務時間に応じて賃金を支払う現在のルールを一部見直す方向で検討しているが、諸外国に比べて長いわが国の労働時間を減らす対策も進めなければならない。

経済協力開発機構(OECD)の調べによると、日本は欧州主要国に比べて長時間労働の人の割合が多い。1週間に49時間以上働く人は、約23%に上り、欧州各国の2倍前後に及ぶ。

長時間労働の日々が続くと心身がむしばまれる。その結果、過労死や過労自殺、心を病む人が後を絶たない。

国連の社会権規約委員会は昨年、日本政府に長時間労働の防止策強化を求める勧告をした。今国会では、議員立法の「過労死等防止対策推進法案」が審議されているが、事態はそれほど深刻である。

欧州の多くの国では、年間の総労働時間の上限を法律で決めている。また、欧州連合(EU)は、終業時刻から次の始業時刻までの間隔(インターバル)を最低11時間空けて休息を取るインターバル規制を設けている。

いずれも、労働者の健康を守るためである。日本も、働き過ぎを防ぐ対策として検討すべきではないだろうか。

長時間労働を生む要因の一つとして指摘されているのが、労働生産性の低さだ。OECDによると、日本の就業者1人あたりの労働生産性は、先進7カ国(G7)の中で20年近く最も低い。日本の企業社会は、長時間労働→社員の疲労蓄積→生産性の低下、という負の連鎖に陥っているのかもしれない。

労働生産性を高めないと、労働人口が減少する日本社会は、国際競争で優位な立場に立てない。長い時間拘束される職場は、子育てや介護を抱える労働者から敬遠され、優秀な人材を集めにくくなる。効率よい働き方を確立しなければ、企業にとっても損失は小さくない。

一部であるが全社員の残業時間を減らす取り組みをスタートさせ、業績を伸ばしている企業が出てきた。柔軟なフレックス勤務制度で、だらだら残業をなくす職場もある。

公明党の提案もあって創設された政労使会議は昨年末、生産性の向上などに政府、経済界、労働界が協力して取り組むことで一致した。職種や業界によって事情は異なるが、先進的な試みを参考に、政労使で本格的に協議できないだろうか。

官民一体で知恵を出し合い、改善できるところから対策を進めてほしい。

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