主張消費税の転嫁拒否 優位な立場利用の悪質行為

公明新聞:2014年4月12日(土)付

中小企業の泣き寝入りを見逃すな

今月から消費税率が8%に引き上げられたが、現場の混乱が報告されている。

大企業が中小の下請け企業に対し、商品の販売価格に増税分を反映しないよう求める「転嫁拒否」の動きが、広がりつつある。企業が商品やサービスの価格に法定の税額分を上乗せし、消費者に最終的な税負担を求める消費税の目的に反する行為だ。

転嫁拒否が横行する可能性は、増税前から指摘されていた。日本商工会議所が、増税直前の3月中下旬に全国3155社の中小企業を対象に調査した。その結果、2割近くの中小企業が「利益の圧縮などで対応する」として、増税分の価格転嫁が何らかの理由で難しい実情を示唆していたからだ。

大半の中小企業は、昨年10月に施行された消費税転嫁対策特別措置法にのっとった円滑な増税対応ができている。ただ、製造業の国内総生産(GDP)のうち半分近くを占める中小企業の2割が不利益を受けているとなれば、経済的損失は単純計算で数兆円規模に上る可能性がある。

同会議所によると、「価格転嫁ができない」と回答した中小企業の状況は現在も変わらないという。利益を犠牲にしてでも対応しなければならない理由に、取引先との関係悪化を気にするあまり、泣き寝入りせざるを得ない雰囲気があるとすれば決して見逃せない。

立場の優位性を悪用した転嫁拒否行為に対して行政が指導した件数は、今年2月で853件だったが、翌3月には1199件まで急増した(公正取引委員会)。中でも、転嫁拒否に当たる「買いたたき」が多い。指導の件数は今後も増加していくとみられ、転嫁拒否が水面下で深刻化する恐れがある。

今後の課題は隠れた転嫁拒否が行われていないか、より詳細に監視・摘発できるかだ。公正取引委員会による積極的な立ち入り検査の実施に加え、重大な違反が判明した企業には、今まで以上に厳正な対処も検討すべきではないか。違法行為の聞き取り調査を全国で行う「転嫁Gメン」の役割強化も極めて重要だ。

消費税率が8%へと切り替わってから、まだ間もない。生活の現場では、早くも「便乗値上げ」を訴え出る消費者の苦情や戸惑いも増加している。

景気の動向を踏まえて、8%から10%への税率引き上げの可否を判断するタイミングも訪れる。再引き上げを円滑に実施するためにも、政府は臨機応変に対応してほしい。

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