主張東電の分社化 廃炉に向けた第一歩に

公明新聞:2014年4月4日(金)付

国際協力、作業環境改善など急げ

東京電力は、福島第1原発の廃炉・汚染水対策部門を社内分社化した「福島第1廃炉推進カンパニー」を1日に発足させた。狙いは現場に権限と責任を集中させることだ。分社化を、廃炉の前進と東電の信頼回復に向けた第一歩としてもらいたい。

東電の企業体質は、実務の多くを協力企業に頼る一方で、現場から距離のある本社の権限が強いという印象を抱く関係者が多い。新組織の発足を機に意思決定を速めるとともに、技術者や福島県民らの声を、しっかり受け止める体制の構築を求めたい。

廃炉に向けた取り組みについて、新組織の最高責任者に就いた増田尚宏氏(元福島第2原発所長)は、現場の状況を積極的に情報公開し、各国から技術面などでの協力を募る意向を示している。廃炉作業を前進させ、重大事故の知見を世界と共有するために必要な視点だ。

炉心溶融した1~3号機では、溶けた核燃料の取り出し方法さえ決まっていない。高い放射線量にも耐えられる技術開発や、格納容器損傷部分の特定・補修など、技術面での課題は山積している。40年とも想定される廃炉工程を早める取り組みは不可欠だ。

福島原発の現場では、作業員の士気向上が求められる。防護服を着用して行われる作業環境は、想像以上に厳しい。衣類に放射性物質が付着しないよう、冬場でも上着を着込むことはできない。使い捨ての薄い手袋しか使用できないので、かじかむ手での作業を強いられる。熱中症の危険性が高まる夏場は、防護服を脱いで汗を拭えず、保冷剤で心臓部分を冷やしながら仕事をする。

汚染水トラブルが後を絶たない福島第1原発では、安易な人為的ミスは絶対に許されない。今後も長期間にわたって作業が続くことを考えれば、作業員の集中力や注意力低下を防ぐための環境の改善が求められる。

廃炉工程が進むにつれ、放射線量の高い原子炉建屋での作業も増える。放射能規制値を超えそうな作業員が、現場を去って行った後の人材確保も忘れてはならない。

最高責任者の増田氏は、地元紙からの問いに応じ、福島第1原発は、もはや「発電所」ではないとの認識を示した。かつてのノウハウが通用せず、無用なトラブルを招かないよう自戒の念も込めての発言だろう。

カンパニーの事業には前例のない困難を伴う。その責務を全うできるよう必要な後押しを政府に求めたい。

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