主張緊迫するウクライナ

公明新聞:2014年3月5日(水)付

主権侵害は許されない
国際社会は外交努力を尽くせ

ウクライナ情勢が緊迫している。ロシアはウクライナ南端のクリミア半島を軍事的に掌握した。ウクライナ軍兵士の投降も相次いでいる。

ウクライナでは先月、親ロシアのヤヌコビッチ政権が崩壊し、欧米寄りの新政権が発足した。ロシアの軍事介入の構えに、欧米は非難を強めている。

ロシア軍の介入は、ウクライナの主権と領土の侵害である。武力衝突を回避するため、ロシアに自制を促したい。

クリミア半島は、ロシアとウクライナの協定によりロシア黒海艦隊が駐留しており、ロシアにとって戦略上の重要拠点だ。ロシア系住民が約6割を占め、ウクライナからの分離を求める声も多い。

ロシアは新政権の正当性を認めておらず、ロシア系住民の保護を理由に軍隊を展開している。ロシアには、クリミア半島を事実上の支配下に置き、新政権の親欧米路線に圧力を掛ける狙いがあるとみられる。

ウクライナは、東部はロシアとの結びつきが歴史的に強く、ロシア系住民が多い一方、西部はカトリックの影響を受けるなど欧州との関係が深い。政変の混乱の中で、ウクライナの東西の確執は高まっている。

ウクライナ新政権にも、過激な民族主義の台頭を抑えるとともに、ロシア系住民への配慮を示すなど、“分裂”を防ぐ取り組みが必要になる。

日本を含む先進7カ国(G7)は、ロシア軍の動きを非難する首脳声明を発表した。6月にロシア・ソチで開かれる主要国首脳会議(サミット)の準備会合への参加見送りも決定した。

米国のオバマ大統領は、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、「深い懸念」を表明し、ロシア軍の撤退を要求したが、拒否された。

米国と欧州連合(EU)は、資金凍結などロシアへの経済制裁を議論している。

平和的に事態を収拾するため、国際社会は結束して外交努力を尽くすべきだ。

日本政府の菅官房長官は4日、「全ての当事者が最大限の自制を発揮し、武力行使を回避し、国際法の完全な順守、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重することを強く求める」と表明した。外交ルートを通じロシア側に自制を求めていることも強調した。平和的解決をめざすようロシアに働き掛け続ける必要がある。

国民への適切な情報発信も不可欠だ。在留邦人の安否確認や安全確保に関する情報収集に万全を期してほしい。

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