主張医療事故の調査機関 病院の信頼高める第一歩

公明新聞:2014年2月18日(火)付

遺族が納得できる原因究明を

政府は、患者が死亡する医療事故が起きた場合に原因を調査する第三者機関の設置などを盛り込んだ医療法改正案を閣議決定、国会に提出した。法改正を病院の信頼高める第一歩につなげてほしい。

厚生労働省は、国内で起きる診療関連の死亡事故を年間1300~2000件と推計している。しかし、その一つ一つの事例を第三者の立場で調査する専門機関がない。

このため、改正案では国や医療機関から独立した民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)を新たに設置する。患者が医療事故で死亡した場合、医療機関に第三者機関への報告を義務付ける。その上で、まず医療機関は院内調査を行い、その結果を遺族に説明する。遺族が納得できない場合は第三者機関が調査を行う。

これまで遺族らが医療事故の真相究明などを求めて、訴訟を起こすケースが多かった。しかし、裁判では遺族らが求める結果には必ずしもつながらない上に、医師側にもリスク(危険性)の高い診療科離れが進み、医師不足に拍車を掛ける一因になっている。

事故調査の仕組みが創設されることは前進である。ただ、懸念がいくつかあり、公明党の部会でも指摘された。

例えば、医療機関と第三者機関が異なる調査結果を出した場合、遺族はどちらを信用すればいいのか。高度な専門医療を提供する病院で事故が起きたら、第三者機関は院内調査を上回るレベルの報告や調査結果を出せるのか。原因究明の動きが混乱する可能性がある。

新制度では第三者機関は警察への通報などを行わず、事故の原因究明と再発防止に徹する。しかし、第三者機関が作った報告書が捜査や裁判に利用されないだろうか。個人の責任追及につながれば、調査を受ける医療関係者が事実を隠ぺいする恐れも出てくる。

院内調査の客観性や公平性をどう高めていくか。透明性を高めるために原則、外部の医療専門家も加えて調査することとしているが、遺族が希望すれば調査途中の議論を傍聴できる工夫なども必要だろう。

また、再発防止に向けて、実際の医療現場でどう改善したか確認する必要がある。医療機関が調査結果に納得しなければ、再発防止にはつながらない。医療機関と第三者機関が、調査結果について議論する場を設ける必要があるのではないか。

あくまで遺族の立場に立った制度の構築をめざし、国会審議で議論を深めてほしい。

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