主張景気回復 賃上げが「好循環」の原動力

公明新聞:2014年1月28日(火)付

世界経済の動向にも目配りを

「わが国経済は、2%の『物価安定の目標』の実現に向けた道筋を順調にたどっている」。先週開かれた日銀の金融政策決定会合を受け、会見に臨んだ黒田東彦総裁はこう語り、自らの金融政策運営に自信をのぞかせた。

同会合は12月に引き続き、景気が「緩やかな回復を続けている」と判断。2014年度の実質GDP(国内総生産)は、昨年10月に公表した「展望リポート」とほぼ同じ1・4%として、経済回復の道のりが順調であるとした。

政府と日銀が、2%の物価安定(インフレ)目標について、異例の共同声明を発表したのはちょうど1年前だった。その3カ月後には、インフレ目標が安定的に2%を持続するまで続ける「量的・質的金融緩和」に踏み切った。歴史的にも異例といえるこの一手は、世界中に大きな波紋を広げた。15年近く続いているデフレからの脱却に向け、かつてないスピード感で矢継ぎ早の対策を講じてきた効果が、ここに来て確かなものになりつつあると評価したい。

ただ、経済は生き物である。先週末には、アルゼンチン通貨の下落をきっかけに、世界主要市場で株安が一気に進んだ。新興国経済への不安と、米国の金融緩和縮小への警戒感が広がったためとみられる。油断は禁物だ。
経済指標の多くは、景気が上向いていることを示しているが、長く続いたデフレからの脱却は容易でない。特に、足元の動向はいまだに安定していない。

1月中旬に日銀が各支店を通じて収集した地域経済報告によると、雇用分野の一部で人員整理など縮小の動きはあるものの、「業種や企業規模、地域を越えた人材獲得競争が激化している」との見方を示した。

ところが、賃金動向は緩慢だ。時間外給与やボーナスは地域・業種を問わず改善しているが、正社員の給与引き上げは「現時点では一部にとどまっている」。企業側には、「景気回復の持続性や他社の動向を見極めたい」「固定費の増加は回避したい」と、賃上げに消極的な声が多いとした。これでは、4月からの消費税率アップに伴い、景気が腰折れしないか心配だ。

安倍首相は、今国会を経済の「好循環実現国会」にすると所信を述べた。好循環とは、地方経済や中小零細企業、そして家計が潤い、景気回復の実感が列島中に行き渡ることにほかならない。

政府・日銀は、こまやかな目配りで、しっかり対応してもらいたい。

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