主張サイバー攻撃

公明新聞:2014年1月23日(木)付

ネット社会の重大な脅威
官民で専門家育成し備え怠るな

経済産業省と業界団体が参加し、サイバー攻撃から電力や化学などの重要インフラ(社会基盤)を守るための実践演習を行っている。今の社会は、ガスや水道などのライフラインに加えて自動車、航空機など、ほぼ全てのものがコンピューター制御に頼っているからだ。

日本のサイバー攻撃対策は、安全保障上の観点が中心になっている。最近では、昨年10月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、大規模なサイバー攻撃があれば、自衛隊と米軍が共同対処することを確認した。

しかし、社会生活や経済の混乱を狙ったサイバー攻撃は、世界各地で急増している。昨年3月には韓国の放送局や銀行が標的になり、パソコンや現金自動預払機(ATM)が一斉にダウンする事態が発生した。韓国が昨年までのサイバー攻撃で受けた被害総額は、800億円近いといわれている。

日本でも昨年5月にポータル(玄関)サイト・ヤフージャパンの管理システムに不正アクセスがあったことが発覚した。最大2200万件の登録名(ID)が流出した可能性がある。韓国のような深刻な被害が、日本でも起こる可能性は十分にある。民間分野での対策強化が急務だ。

政府は攻撃を受けた民間企業の復旧支援を担う「レスキュー隊」を、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)に数十人規模で発足させる方針を新たに示した。

行政事務を効率化し、国民の利便性向上に役立てるマイナンバー制度や、東京五輪の開催など社会の各分野で情報技術(IT)の活用が飛躍的に進むのは間違いない。政府はレスキュー隊の準備を急ぎ、一層の体制拡充も視野に入れるべきだ。

サイバー攻撃から社会を守るには、ITに精通した人材確保が重要だが、育成は進んでいない。マイナンバー制度の整備だけでも、8万人近くのIT技術者が不足するとの指摘もある。

イスラエルでは15歳からセキュリティー教育に取り組んでいる。早期教育を含め、大学や公的研究機関で情報セキュリティーに関する教育体制の整備も必要だ。サイバー攻撃の手口は日々進化しており、対策はスピード感が求められる。民間分野でのセキュリティー対策が進む欧米諸国との技術連携や人材交流も強化すべきだ。

ネット空間の安全性確保は、国家の最優先課題となった。官民一丸で、サイバー攻撃に備える態勢を築かなければならない。

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