主張原発廃炉 作業円滑化へ人材の確保を

公明新聞:2014年1月18日(土)付

世界の英知結集し、知見共有も

原子力分野からの人材流出が続くため、文部科学省は来年度から新たに原発廃炉を担う技術者らの育成に取り組む構えだ。

30~40年という非常に長い時間が必要とされる廃炉の作業を着実に進めていくためには、確かな知見が欠かせない。また、原発に関する重要な情報の国外への流出を防ぎ、計画に沿った作業を進めるためにも、国内に一定数の技術者を確保しなければならない。

文科省は、2014年度予算案に新規で約2億5000万円を計上し、大学などの研究機関に事業の中核拠点を設置する。放射性廃棄物の解体や処分に関する技術などの研究を通じて人材を育成する方針だ。

東京電力福島第1原発の事故では、溶けた核燃料の取り出しなど難しい課題も多く、廃炉作業に関する研究の必要性は震災直後から指摘されていた。多大な困難を伴う作業になるが、万全の体制で進めてもらいたい。

10年度に134人だった東電の依願退職者は、11年度には465人、12年度は712人と急増している。退職者の大半が40歳以下で、この分野の将来性を悲観したり給与削減などの影響があると見られている。

一方で、日本原子力産業協会が先月に大阪で開催した就職セミナーには、前年度より約70人多い195人が参加した。こうしたセミナーには、原子力関係の仕事に就くことを家族に反対されながらも「廃炉に携わる業務を通して福島の復興に貢献したい」との使命感とも思われる気持ちを抱いて参加した学生もいるという。

廃炉など原子力のバックエンド(最終過程)に、誰もが喜んで参加する現状にはない。政府は、研究者らに対して十分な支援体制を整えてもらいたい。

廃炉作業は、世界の英知を結集して取り組み、その経験と知見を各国が“財産”として共有すべきだ。世界では、福島での原発事故以降も、新興国を中心にエネルギー需要が高まり、原発の新設が続けられる見通しだ。福島原発の廃炉に関する知見が、各国の今後の制度設計や運用の在り方に影響を与えることは間違いない。

先月、東電は廃炉事業を社内分社化し、今年4月をめどに「廃炉カンパニー(仮称)」を設置することを発表した。東電だけで情報を抱え込まず、世界と知見を共有する仕組みを明確にしておくべきだ、とあらためて強調しておきたい。

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