本格始動!命守る防災・減災

公明新聞:2013年12月22日(日)付

西脇トンネルの天井部を点検する作業員=今年1月 兵庫・西脇市西脇トンネルの天井部を点検する作業員=今年1月 兵庫・西脇市(国土交通省提供)

公明推進の基本法成立

公明党が掲げる「防災・減災ニューディール」の主張を反映した「防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が今月4日に成立しました。17日には同法に基づ き、安倍晋三首相を本部長とする国土強靱化推進本部の初会合が開かれ、基本計画策定の基となる政策大綱も決定。災害から国民の生命を守ることを目的とした 防災・減災の取り組みが本格的にスタートしようとしています。

国土の“総点検”
「脆弱性評価」を実施
優先度の高い順から着手

東日本大震災では、交通網の寸断や情報通信機能のまひ、行政の機能不全など、数多くの課題が浮き彫りになりました。さらに、人命救助や復旧・復興に欠かせない道路や橋などインフラ(社会資本)の多くは、中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故(山梨県)のように、老朽化が指摘されています。

防災・減災基本法では、公明党の主張が数多く反映されています。最大の特徴は、大規模な自然災害が発生した時、このような「起きてはならない最悪の事態」を回避するため、日本各地の災害対策で、どこが課題なのかを洗い出す「脆弱性評価」の実施です。

具体的には、45項目の「起きてはならない最悪の事態」に対し、府省庁がそれぞれ実施する防災・減災に関する施策の達成度を来年3月末までに“総点検”します。項目ごとに対策が進んでいるかをチェックするため、対策が不十分な点が特定され、優先順位の高い順から重点的に対策を進めることができます。

同法では、この脆弱性評価を受け、国土強靱化推進本部が社会資本整備計画など国の各種計画の指針となる「国土強靱化基本計画」を来年5月をめどに策定します。都道府県や市町村は、国の基本計画に沿って、地域ごとの計画を定めることとしています。このほか、民間資金の積極的な活用、公共施設などの効率的な維持・管理、費用の縮減も盛り込まれています。

こうした動きに先行する形で、インフラの点検は各地で進んでいます。世界で初めてマイクロ波を利用し、道路下の空洞を正確に探知する技術を実用化した「ジオ・サーチ株式会社」の冨田洋社長は「道路下などの空洞調査を発注する自治体が多く、調査した総距離は昨年と比べて倍増しました。人命を守るためにも、インフラなどの脆弱性評価で優先度を付けて危険箇所の改修を見える形で進めてほしい」と語っています。

ソフト対策の充実
女性、高齢者ら弱者の視点生かす支援
国挙げて防災教育に取り組む契機に

防災・減災基本法には、公明党の主張でソフト対策の充実が明記されました。その一つが、女性、高齢者、子ども、障がい者などの視点を重視した被災者への支援体制の整備です。公明党は、東日本大震災をきっかけに女性委員会に「女性防災会議」を設置。「女性の視点」からの防災対策について、国や地方でさまざまな提言を行ってきました。

女性専用の更衣室や授乳室が設けられた山梨県南アルプス市での避難所運営訓練

女性などの視点を生かした被災者支援策を区の防災計画に反映させた東京都港区の防災担当者は、「弱者に配慮した施策は女性の視点がないと出てこない。これらが法律に明記されたことは大変に重要なことだ」と歓迎。同じく、女性などの視点を反映した避難所の運営訓練を行っている山梨県南アルプス市の担当者も、国が方針を示したことを高く評価しています。

また、ソフト対策として、防災教育の推進も法律に盛り込まれました。各地で防災教育に取り組む学校などを支援している「防災教育チャレンジプラン」。

東日本大震災の津波で被災した仙台市沿岸部の小学校で行われた防災教育の授業

その実行委員会の委員を務める特定非営利活動法人・レスキューストックヤードの栗田暢之代表理事は、「防災教育を国民を挙げてやろうというのが東日本大震災の教訓だ。今回の法整備により、その教訓が最大限に生かされる要素ができた」と指摘。その上で、「学校で防災教育を行う教師の研修・育成をどう図るかが課題になる。学校とNPO(民間非営利団体)との連携も重要だ」と述べ、具体化への取り組みに意欲を示しています。

 

“国民の強靱化”を各地域で
群馬大学大学院
片田 敏孝 教授

日本は、伊勢湾台風(1959年)を契機に制定された災害対策基本法によって行政主体の災害対策が先進国にふさわしいレベルまで整えられ、災害犠牲者を大きく減らすことに成功してきました。

これまでの防災は、被災後の対応をどうするかが議論の中心でしたが、今回、成立した基本法が災害に向けた事前の防災を強調していることは、大きな進歩と言え、高く評価します。

一方で、国民自身が行政に頼ることなく、自らの命を自ら守り抜くという姿勢として“国民の強靱化”を、私は強く訴えてきました。3.11の東日本大震災を経験し、想定される南海トラフ巨大地震なども考え合わせると、国土強靱化で行うハード対策を超える災害は必ずあります。その対策を超える部分をどうするのかという議論を強化していかなければ、本当の意味での強靱化にはなりません。

今後、基本法に従って地域計画の策定が進みます。各地域においては、ソフト面の対策についても具体的に政策体系の中に盛り込んでほしいと思います。公明党には、“国民の強靱化”に向けた政策体系の強化を支援し、連携して動いてもらいたいと期待します。

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