主張イラン核協議の合意 経済制裁の一部を緩和

公明新聞:2013年11月27日(水)付

ウラン濃縮を制限、中東安定へ前進

10年以上に及ぶイランの核問題に、ようやく解決の道が見えてきた。

ジュネーブで行われていたイランとEU3(欧州連合の英仏独)+米中ロの6カ国の交渉は24日、ウラン濃縮の制限などで合意に達した。イランの核疑惑解消と中東地域の平和と安定への第一歩として歓迎したい。

合意では、イランは核兵器製造につながる高濃縮ウランの製造を凍結し、西部アクラの実験用重水炉の建設を中断、国際原子力機関(IAEA)による濃縮施設への査察を受け入れる。これに伴い、イランに対して合意の実行を見極める6カ月間、新たな経済制裁は行われず、原油収入の一部である約42億ドルの資産凍結は解除される。

イランでは今年8月、保守強硬派のアハマディネジャド氏に代わって穏健派のロウハニ大統領が就任し、9月には、1979年の国交断絶後、初めての首脳間対話となるオバマ大統領との電話会談も行われた。核開発問題について合意の実現への機運は高まっていたといえる。

核疑惑による欧米諸国などの経済制裁でイラン経済は疲弊が進んだ。その脱却を期待されて登場したロウハニ大統領にとって、今回の合意は大きな成果であろう。また、化学兵器の使用が指摘されるシリア・アサド政権への対応で混乱が目立った米オバマ政権にとっても、「外交の勝利」であることは間違いない。

もちろん、合意への反対論もある。ウラン濃縮そのものは禁止されておらず、米共和党からは「これではイランの核開発を止めることにはならない」「制裁を強化するべきだ」などの批判が噴出している。イランの核開発に警戒感を強めてきたイスラエルのネタニヤフ首相も「歴史的な過ちだ」と強く批判している。

今後、6カ月、核兵器製造への道を完全にふさぐための、包括的な解決策を練り上げなければならない。

中東の政治地図は長期独裁政権への民衆の怒りによる反政府運動である「アラブの春」を経て激変している。今や、エジプトでは親米路線が揺らぎ、米国の重要なパートナーであるサウジアラビアが先月、国連の安全保障理事会の非常任理事国のポスト辞退を表明するなど、混乱の要因は少なくない。

イランが反米路線を続け、核開発の動きを見せれば、中東の不安定化は止まらない。国際社会は、弱体化が指摘される核不拡散体制を強化し、核兵器の製造につながる動きを阻止しなければならない。

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