主張汚染水対策 早期収束へ万全を期せ

公明新聞:2013年9月25日(水)付

凍土壁、多核種除去設備など 広く英知集め、技術確立を

「野戦病院さながらの状態にあり、従って“火事場の対応”とならざるを得ない」。20日、公明党の井上義久幹事長らが行った東京電力福島第1原発の視察の際、現地の東電幹部が思わず漏らした“本音”である。

実際、汚染水の流出が止まらない現場は異様な空気に包まれ、文字通り、非常事態の観を呈していた。

視察後、井上幹事長が指摘した通り、東電任せでは現状を改善できないことは明らかで、政府は万全の体制を早急に整え、より踏み込んだ形で対応に当たる必要がある。事態は“待ったなし”であることを重ねて強調しておきたい。

汚染水対策は第1原発の廃炉計画と福島再生の行方に直結する問題である。ここでもたつけば廃炉作業は大きく遅れ、事故収束も住民帰還もますます遠のく。風評被害を抑えることも到底、叶わない。

解決のポイントは、地下水の流入をどう絶つかだ。

原発建屋内には毎日400トンの地下水が流入し、一部が汚染水となって海に流出している。東電は敷地内のタンクに汚染水を溜めてきたが、それも既に1000基を数え、限界に近づいている。追い打ちをかけるように、タンクから300トンの汚染水が漏れていたことも明らかになった。

こうした事態に、政府は総額470億円の国費を投入して積極的に対応する構えだ。事故後、当時の民主党政権が敷いた「東電の責任で事故処理を行う」仕組みから脱却する姿勢に転じたことは、遅きに失した感があるとはいえ、評価されていいだろう。

国費投入の目玉は、地下の土を凍らせて地下水を遮断する大掛かりな凍土壁の建設と、汚染水浄化のための新しい多核種除去設備の開発である。

ただし、いずれの施設も研究段階にあり、技術的なメドが立っているわけではない。やはり視察後に井上幹事長が指摘したように、「(これらの施設だけで)十分かどうか、有効性の検証が必要」だろう。専門家の英知を広く内外から集め、技術の確立を急ぎたい。

併せて、汚染水が漏れた「ボルト締め型」タンクの「熔接型」への切り替えや作業員の環境改善、外洋への影響防止に不可欠な「海側遮水壁」の建設促進など、今すぐやらなければならない“火事場の対応”への支援策の拡充も急を要する。

日本の危機管理能力が問われる事態に、政府も与野党も一丸となって対応に当たるべきことを強く求めたい。

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