主張中小企業の個人保証 従来型融資からの転換を

公明新聞:2013年9月20日(金)付

経営の可能性が膨らむ環境が必要

中小企業庁と金融庁は、中小企業向け融資件数の8割に付く「個人保証」の設定基準について、金融機関向けのガイドライン(指針)を年内に策定する方針を示した。日本商工会議所と全国銀行協会の議論をベースに、個人保証に依存しない中小企業の資金調達環境を整備する狙いだ。

個人保証は、借りた経営資金を経営者個人の財産で返済を保証することだ。経営に失敗した場合、家などが差し押さえられ、生活ができなくなることもある。融資慣行として定着しているが、中小企業経営の活性化を妨げているとの指摘がある。中小企業の再興は、経済の自律的な成長に必要不可欠だ。個人保証に過度に頼らない融資モデルを確立できれば、企業の新分野挑戦も促せる。

中小企業の収益性が高まり、財務基盤が強固になれば、個人保証を求める商慣行も減るとみられる。

地域の金融機関と中小企業は、資金面に限らず、経営戦略も含めた多様な関係性を構築していく必要がある。多くの中小企業は、売上確保に苦労している。金融機関も企業向け融資を減らし、結果的に収益拡大の機会を逃してきた。景気が回復してきた今、金融機関の顧客網と「目利き」を生かして、中小企業の販路拡大に貢献することを期待する声もある。それは、自らの利益の拡大にもつながるのではないか。

個人保証の弊害として、精神的負担が大きい点を挙げる声も少なくない。一方で、個人保証を付ける以外に、融資を受ける方法がない企業があるのも事実だ。

個々に異なる中小企業の実態に即しつつ、経営の可能性を引き出す資金調達の仕組みが重要だ。例えば、中小企業が新製品の開発に際して、資金を集められず開発を断念するケースがある。地域の金融機関から与信限度額以上の融資を取り付けることも難しい。

技術力の高い中小企業に対して、投資を希望する海外投資家もいるが、過剰な経営干渉を恐れて資金受け入れを敬遠する企業も多い。こうした姿勢は、資金調達の選択肢を狭め、事業拡大の機会喪失につながりかねない。適切な企業買収防衛策や、新たな資金調達方法との向き合い方を相談できる専門家が必要だ。その面でも金融機関の役割を求める要望が強い。

中小企業の活躍の場が広がる中で、必要な資金調達をどう支えるかの議論は遅れ気味だ。政府は中小企業の経営姿勢が前向きになるガイドラインの策定をめざしてほしい。

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