主張原発被災者支援法 「基本方針」いつ示すのか

公明新聞:2013年7月30日(火)付

成立から1年以上 許されぬ“たなざらし”状態

「仏作って魂入れず」では困る。政府は速やかに法律の精神を反映する具体的な行動方針を示すべきだ。

東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされている人たちの生活と健康を守ることを明記した「原発事故子ども・被災者支援法」の“たなざらし”状態が続いている。

実際に支援を行う上で必要な「基本方針」が一向に定まらず、支援法が単なる「理念法」の域にとどまっているためだ。「決める政治」を掲げる安倍政権の面目に懸けても、政府は“待ったなし”で策定作業を進めてもらいたい。

支援法は、国が責任を持って自主避難者も含めた全ての避難者を支援することを約束する。住宅、就学、就業支援などのほか、放射線被ばくの影響を受けやすい子どもや妊婦の健康確保もうたっている。

これらの支援内容を財政的に裏付け、具体化させるのが基本方針だ。

だが、支援法成立から1年1カ月、取りまとめ役の復興庁はいまだこれを固め切れない。「国は本気で支援する覚悟があるのか」「私たちの惨状が分かっていない」。今なお全国に15万人を数える原発避難者の不満は募る一方だ。

基本方針づくりが遅れている最大の理由は「支援対象地域」の確定が容易でないことである。支援法は「一定の基準以上の放射線量」がある地域とするだけで、明確な線引きを示していない。

一つの目安は、政府が住民避難の基準とした「年間被ばく線量20ミリシーベルト」だろう。だが、これでは自主避難者の多くが支援対象から漏れ、被災者の不安がかえって増す恐れがある。かといって、平常時の「年間被ばく線量1ミリシーベルト」では、自主避難者は対象となるものの、その分、支援範囲は8県にも広がり、風評被害の拡大を招きかねない。

復興庁が二の足を踏むわけが分からぬでもない。

とはいえ、「福島」の現実を思えば、これ以上の支援の先送りは許されない。避難生活が長期化する中、原発被災者の精神的、身体的疲労はすでに限界を超えている。

鍵を握るのは結局、政治だろう。そもそも支援法は昨年6月、超党派による議員立法として全会一致で可決、成立した。その経緯に照らしても、基本方針策定をひとり復興庁だけに押しつけるべきではあるまい。本来的にも一官庁任せでなく、政治が決断すべき課題であるはずだ。

ここは全ての政党が支援法成立時の原点に立ち返り、あらためて全会一致で基本方針づくりをめざしたらどうか。

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