市販薬のネット販売解禁

公明新聞:2013年7月26日(金)付

健康守り経済成長も
公明主導で安全確保へルール作り

市販薬の分類最高裁判決を受けて、今年1月から事実上、解禁されている市販薬のインターネット販売は、離島など“薬局過疎地”の住民に恩恵をもたらしている。その一方で、購入者に健康被害を起こさないような安全対策も急務だ。ネット販売解禁の現状と公明党の取り組みを追った。

市販薬は、2009年に施行された改正薬事法により、副作用のリスク(危険)の程度に応じて高い順から第1、2、3類に分類されている。第1類は、胃腸薬や育毛剤など約100品目、第2類は風邪薬や解熱鎮痛剤など約8290品目、第3類はビタミン剤や整腸剤など約2950品目―ある。

第1類は、医師の処方箋が必要な医療用医薬品から切り替えられたものが多く、国家資格者である薬剤師には購入者に薬に関する情報提供を書面で行うことが義務付けられている。第2類にも、薬剤師、または都道府県が実施する試験に合格した「登録販売者」による情報提供の努力義務を課した。

これを踏まえて厚生労働省は省令で、第1、2類については薬局などでの対面販売を義務付け、ネット販売を一律に禁止してきた。しかし、今年1月の最高裁判決でネット販売禁止が「違法で無効」と判断され、その後、事実上の解禁状態となっている。

市販薬のネット販売解禁そこで政府は6月に閣議決定した成長戦略「日本再興戦略」の中に、市販薬のネット販売の解禁を盛り込んだ。

市販薬をいつでも自由に購入できるようになれば、離島、山間部など交通の便が悪い地域の住民や、妊婦、高齢者、体が不自由な方などには大きなメリットだ。

「薬が急に必要になっても、島内に薬局がないので、わざわざ本土に渡って買うしかない。自宅のパソコンで手軽に購入できるようになれば、とても便利だ」。そう語る藤本初雄さん(59)が住むのは、広島県尾道市の百島。瀬戸内海に浮かぶ人口約600人の離島だ。同省によると、百島のように、薬局やドラッグストアがない離島が、全国に257あるという(12年2月1日現在)。

同戦略で政府は、規制を積極的に取り除き、民間企業の参入によって活力を引き出す「規制省国」の実現を掲げた。今回のネット販売解禁もその一つだ。

一方で、薬には副作用が伴うため、服用を誤れば、深刻な健康被害が起きる可能性がある。例えば、市販薬による副作用が疑われるとして厚労省に報告された症例は、過去5年間で1220件。うち死亡例は24件に上る。これらは対面販売によるものとみられるが、今後、ネット販売が加速すれば、健康被害が増えるのではないかとの懸念がある。

1月の最高裁判決を受けて、厚労省は翌2月に医薬品の業界団体や消費者、医療関係者らによる検討会を設置し、市販薬のネット販売の新たなルール作りに向けた議論を重ねてきた。しかし、推進派と慎重派の意見の溝が埋まらず、6月に公表された取りまとめは両論併記に。消費者の安全をどう確保するかが課題として残ったままになった。

前述の藤本さんも「薬は本や家電とは質が異なる。安全性がきちんと確保されていないと、購入には慎重にならざるを得ない」と語る。

成長戦略の当初案では、第1類のうち、市販薬に切り替わったばかりの「スイッチ直後品目」21品目と、使用法を誤ると危険な「劇薬指定品目」4品目の合計25品目についてのみ、厚労省が今秋ごろまでに結論を得て措置を講じることになっていた。

そこで公明党は、「これらの25品目を超えて、広く消費者を守る販売ルールを設けるべき」と主張。その結果、「消費者の安全性を確保しつつ、適切なルールの下で行うこととする」との文言を成長戦略に追加させることができた。同ルールについても今秋ごろまでに結論を出す予定になっている。

違法サイトや偽造薬の取り締まりなど急務

古屋範子 公明党厚生労働部会長代理

市販薬のネット販売を安心して活用できるよう、今後求められる対策について、古屋範子・公明党厚生労働部会長代理(衆院議員)に聞いた。

対策に当たっては、消費者の安全をどう確保するかを第一に考えるべきだ。厚労省の検討会による取りまとめでは、残念ながら有効な安全策が提案されていない。

今秋をめどにしたルール作りに向けて、今後、新たに設けられる検討会での議論を注視していきたい。

例えば、消費者の健康を守る体制として、(1)販売に当たっての薬剤師によるネットや電話を通じた応対・情報提供(2)違法サイトや、服用するだけで健康被害を及ぼすような偽造薬の取り締まり(3)信頼できるネット販売業者を見分ける制度の導入―などの具体化が急務だ。

海外では医薬品をネット販売する国が多く、ネット上で増加する偽造薬を排除する対策にも力を入れており、参考になるだろう。

ネット販売の経済的な効果ばかりに目が向いて、安全を置き去りにしてしまえば、本来の目的である国民の健康も守れない。公明党らしい目配りをしながら、市販薬のネット販売を進めていきたい。

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