福島から世界初めざす

公明新聞:2013年7月8日(月)付

浮体式洋上風力発電
大規模事業化の実現へ

10月から運用開始

浮体式洋上風力発電福島から世界初の浮体式洋上風力発電の未来を開く―東日本大震災と東京電力福島第1原発の事故によって大きな被害を受けた福島県で、再生可能エネルギーの一つとして世界的に普及が進む風力発電の新技術確立に向けた実証研究【『実証研究の概要』参照】が今秋から本格化する。めざすのは世界初の浮体式による大規模な洋上風力発電の事業化。国際的には海底に土台をつくって風車を建てる着床式が主流だが、遠浅の海域が少ない日本では浮体式の風車による洋上風力発電所に期待がかかる。公明党は参院選重点政策で浮体式の積極的取り組みを掲げている。

実証研究の概要

「浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業」は、経済産業省が丸紅、東大、三菱重工など11団体に委託して進めている。ウインドファームとは、大型風車を多数設置した集合型風力発電所のこと。

出力2000キロワット、直径80メートルの大型風車を装備した浮体式洋上風力発電設備「ふくしま未来」と、洋上変電所となる浮体式洋上サブステーション「ふくしま絆」を7月から8月にかけて福島沖約20キロメートルの海域に係留し、送電用ケーブルを敷設した上で10月から運転を開始する。

2014年度までに浮体式として世界最大級となる出力7000キロワットの新たな風車が2基増設されると、浮体式洋上風力発電所として世界最大級になる見込み。15年度までに経済性を評価し、安全性を確認する。

復興の追い風
ウインドファーム
建設の可能性探る


風力発電は無尽蔵にある風力エネルギーを使い、その運動エネルギーの最大45%程度を電気エネルギーに変換できる。

しかし、風力発電は風向や風速の変動など風況に左右されるため安定したエネルギー供給には課題がある。日本は風力発電が普及している欧米諸国に比べ大気の乱れが大きく、特に陸地で風況の良い場所を確保することは難しい。そのため、強く安定した風が吹く海上に設置する洋上風力発電に注目が集まっている。

環境省の「2010年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」によると、日本の洋上風力の導入可能量は15億7000万キロワットに上る。これは太陽光の10倍で、全国10電力会社の総電力設備容量の約2億400万キロワット(09年度)をはるかに超える。

日本の国土には着床式の洋上風力発電に適した水深50メートル以下の浅い海域が少ないため、深い海域でも設置できる浮体式の洋上風力発電が適している。しかし、国際的にも浮体式の技術開発は始まったばかりで、福島県沖で進む浮体式洋上風力発電の実証研究に対する期待は大きい。

この実証研究の目的は、再生可能エネルギーの一翼を担えるウインドファーム(集合型風力発電所)の事業化であり、原発事故で被害を受けた福島県復興の追い風にもなる。世界に先駆けて事業化の技術を確立できれば、洋上風力発電の市場も広がる。

洋上風力発電では、航行の安全、海洋環境の保全、漁業との共存など社会的合意が必要になる。漁業に関しては、福島の地元漁業関係者と共にウインドファームの海域で漁獲量を確保する方法も探る。

環境省が長崎県で実験中の浮体式洋上風力発電設備の周辺海域には、カンパチやメジナなどの魚が集まり集魚効果も確認されている。発電と漁業が共存する「海の高度利用」も期待できる。

再生エネ拡大続く
昨年、世界の新規導入の約40%が風力

世界のエネルギー専門家らでつくる「21世紀の再生可能エネルギー政策ネットワーク」が6月に発行した13年版世界白書によると、世界の再生可能エネルギー設備の総発電能力は昨年1年間で8.5%増え14億7000万キロワットに達した。

このうち風力発電の総発電能力は19%増の2億8248万キロワットとなった。100万キロワット級原発の280基分に当たり、太陽光発電の約3倍の規模だ。

また、再生可能エネルギーの発電設備の新規導入量でも風力発電は39%を占め、水力発電と太陽光発電(いずれも26%)より多かった。

風力発電の利用は世界第2位の経済規模を誇る中国がリードし、国内発電量で初めて石炭を超えた。2位の米国では、全ての発電方式に優先して風力発電が新規導入された。

日本も00年以降、風力発電の発電量は順調に増え、一昨年は255万キロワットを超えたが、中国の30分の1程度にすぎない。設置基数も一昨年、昨年と伸び悩み、今年3月には三重県と京都府で陸上設置の風力発電の風車落下事故があったため、洋上風力発電が改めて注目されている。

福島県を新技術の一大集積地に
党総合エネルギー政策委員会顧問
斉藤鉄夫氏に聞く


海上の風力エネルギーを使う洋上風力発電は、日本の再生可能エネルギーの柱の一つになり得る。そのカギを握るのが、深い海域にも設置できる浮体式の技術確立と事業化である。

公明党は震災復興の意義も込め、台風や落雷などの影響が少ないなど風況の良い福島県沖での実証研究を訴えてきた。

風力発電関連産業は部品製造、組み立て、補修などで多くの雇用を生み出せる。福島県をその一大集積地にすることも実証研究の目的の一つである。ぜひ成功させたい。

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