燃油高騰が経営直撃

公明新聞:2013年6月8日(土)付

函館漁港でスルメイカを水揚げする漁師や卸売業者ら=6日 北海道函館市函館漁港でスルメイカを水揚げする漁師や卸売業者ら=6日 北海道函館市

イカ漁解禁も採算合わず
北海道函館市

日本経済の再建へ、円安と株高の動向が注目される中、公明党は円安による燃油価格の高騰が企業経営や家計に与える影響を注視し、いち早く政府に対策を求めてきた。特に、漁業は経費に占める燃料代の割合が高く、燃油高騰が経営を圧迫。イカ釣り漁が盛んな北海道函館市の現状とともに、公明党の取り組みを紹介する。

まだ夜も明けぬ午前3時ごろ、漁を終えた船が次々と港へ帰って来る。函館市の函館漁港。今月から道南地方でスルメイカ漁が解禁された。

同市漁業協同組合に所属する専業のイカ釣り漁船は23隻。この時期の主な漁場は松前町沖で、同港から約80キロ離れ、片道5時間かけ船を走らせる。それだけに、燃油高騰は漁業経営を直撃している。

イカ釣り特有の事情もある。夜行性のイカを効率よく捕るため、夜間に集魚灯をともしながらの漁となり、非常に多くの電力を消費。発電を含め、1回の漁で使用する燃油は漁船1隻につき、一晩で少なくとも約500~600リットルになる。

現場の漁師は、航行速度を抑えたり、集魚灯を間引くなどの工夫で経費節減に努めているが、「イカの値段は安いままのため、採算が合わず、漁に出たくても出られない漁師もいる」(同漁協組合の高谷広行専務)という厳しい現状だ。

漁業用A重油の価格は最近の急激な円安で上昇傾向にある。昨年の同じ時期と比べても、1リットル当たり10円程度の値上がり。1回の漁で5000円以上の経費が上乗せになる計算だ。イカ釣り漁師の田原正明さん(53)は「円安は漁師にとってさらなるダメージ」と不安を語る。

市農林水産部の小上一郎部長は「函館はイカのまち。イカ釣り漁師が地域を支えてくれている」と語った上で、政府が5日に打ち出した漁業用燃油高騰に対する緊急特別対策について「漁業者の声が国に届いたのではないか」と評価。一方で地域の基幹産業を守るため、一層の支援策を求めていく考えを示した。

緊急特別対策が決定
「漁業者の声」もとに公明推進


緊急特別対策は、燃油価格が一定基準を超えた場合に補填する「漁業経営セーフティーネット構築事業」を拡充。2014年度末までの措置として、A重油1リットル当たり95円の「特別対策発動ライン」を設け、これを上回った燃油代の4分の3を国が負担する。

公明党は今年2月、急激な円安による燃油高騰が寒冷地や被災地、農林漁業者、中小企業・小規模事業者に大きな影響を及ぼしている事態を重視。2月22日には総合対策の実施を政府に要請した。

漁業に関しては、休漁や廃業の危機に直面する漁業者の切実な声を聞き、国会質問で粘り強く対策の実施を訴えてきた。その結果、従来の対策で「一定の対応が可能」(2月26日)と答弁していた政府が緊急特別対策を検討する運びとなった。

燃油高騰問題は、消費の減少と魚価の低迷に伴う漁業経営の逼迫に追い打ちを掛けた形だが、5日の党農林水産部会で井上義久幹事長は政府に対し、「引き続き抜本的な漁業経営安定対策の検討を」と求めた。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

新聞の定期購読