中小企業 政府が4月から新支援策

公明新聞:2013年4月13日(土)付

上田勇 衆院議員上田勇 衆院議員

党中小企業・小規模事業者振興委員会委員長
上田勇・衆院議員に聞く

中小企業金融円滑化法が先月末で終了した。中小企業や小規模事業者の経営者からは、今後の資金繰りに対する不安が出ている。同法終了後の政府の支援策や公明党の取り組みを、党中小企業・小規模事業者振興委員会の上田勇委員長(衆院議員)に聞いた。

金融円滑化法(先月終了)並み維持
狙いは経営改善 「貸し渋り」防止へ点検・監視

金融円滑化法の終了後の主な支援体制―中小企業金融円滑化法が担っていた役割をどう評価するか。

上田勇委員長 金融円滑化法は、2008年のリーマンショックによる世界的な景気悪化から中小企業の資金繰りを助けるための緊急措置として09年から施行された。

「100年に1度」といわれた大幅な景気後退による中小企業の資金繰り難を乗り切る支援策として、重要な役割を果たしたといえる。

―なぜ、終了したのか。

上田 金融円滑化法は、経済がある程度安定した段階で緊急措置をやめて正常な状態に戻すというのが、本来の趣旨だ。

現在の経済は徐々に好転しつつある。

しかし、急激に終了すれば、中小企業の資金調達に大きな混乱が生じる恐れがあり、経済回復の足を引っ張ることになる。

―中小企業の経営者から不安の声を聞く。

上田 公明党は寄せられた不安の声を重く受け止めて、3月7日、政府に対して法終了後も中小企業、小規模事業者への金融支援に万全の配慮を行うよう申し入れた。

具体的には、(1)今後も金融円滑化法と同等の金融支援を行い、その方針を「検査マニュアル・監督指針」で明確化し担保する(2)貸し付け条件の変更などの申し込み状況・実施状況を把握し公表する(3)中小企業の再生支援の充実―などを要望した。

公明党の要望を受け入れた政府は、金融支援に万全を期するための総合的な支援体制を用意した。

―資金繰りなどの金融支援は、どうなるのか。

上田 中小企業や小規模事業者には、貸し付け条件の変更に応じてもらえなくなるのではないかなど、強い不安があるが、当面はこれまでと全く変わらない。

中小企業や小規模事業者からの要望については、金融庁が「従来と同じような対応に努めるように」と金融機関に要請しており、周知徹底済みだ。

金融庁が金融機関に対して、貸し出し条件変更への対応状況について報告を求め、「貸し渋り」が起きないよう監視していく。

一方、金融機関側にも不安材料がある。法律がなくなったことによって、貸し出し債権に対する評価が変わり、業務の健全性や資産内容などを調べる国の検査が厳しくなるのではないかとの危惧もあった。これは金融機関の融資を萎縮させる原因になりかねない。

そこで、「検査マニュアル・監督指針」を改正し、金融機関側の不安にも十分配慮した。

―中小企業の経営力強化は、どうなるのか。

上田 金融支援に最善を尽くしても企業経営が改善しなければ、金融機関からの融資が、いずれ不良債権になりかねない。

今回の支援策は、企業の延命が目的ではなく、経営再生のために活用してもらうことが狙いだ。

そのため、「経営革新等支援機関(認定支援機関)」などによる経営改善計画の策定支援を充実するほか、政府系金融機関による「セーフティネット貸付」や借換保証制度も拡充することとしている。

そして、何より重要なのは、政府が全力を挙げて景気をよくしていくことだ。金融支援だけでなく、経済全体を好転させることが中小企業の活性化に必要不可欠だ。

資金繰りで優遇利率も
複数の機関が再生を手助け


金融円滑化法終了による中小企業・小規模事業者の経営環境の悪化を防ぐために、政府は「スピード感をもって対策を推進」することを打ち出した。

関心の高い資金繰り支援は、日本政策金融公庫など政府系金融機関や、信用保証協会による最善の体制を敷く。

具体的には、経営支援型セーフティネット貸付や借換保証制度を活用。認定支援機関などの経営改善支援を受けているなど一定条件を満たせば、同公庫の中小企業事業などに適用されている基準利率から、最大0.6%低い金利で、運転資金の融資を受けることが可能だ。

資金繰り支援と同様に重要なのが、企業融資や出資を通じ、地域経済と密接に関わる金融機関による経営支援の強化だ。

金融庁は、金融機関の業務内容をチェックするための「検査マニュアル・監督指針」に、中小企業の経営改善に最大限取り組むよう求める項目を明記。同庁は、検査・監督で実行の状況を確認する。

一方、支援を受ける企業側の努力も欠かせない。

特に、金融機関が積極的な経営支援を行う上で重視するのが将来の売上や利益、経営方針などを示した「経営改善計画」の有無だ。

中小企業白書(2010年版)の調査では、金融機関の9割が「売上・利益の計画」を立てることを求めている。しかし、実際は、人材不足や費用の問題などがあるため中小企業の独力による経営改善計画の策定は困難だ。

そこで、政府は“経営改善支援の応援団”として、税理士など約6700の専門家を認定支援機関に認定。経営改善計画の策定・実行の支援や、経営分析などを強力に手助けする。

また、応援団として、各都道府県の中小企業再生支援協議会と、地域経済活性化支援機構が、資金繰り支援など直接の事業再生や地域経済活性化に取り組む。さらに、同支援機構などが出資する「事業再生ファンド(基金)」による中小企業への出資・融資も促す。

これら積極的な支援策を打ち出しても使い勝手が良くなければ意味がない。政府は、分かりやすいパンフレットの提供などで企業の理解を促していく。

主な相談窓口「経営の悩み」を気軽に電話相談

資金繰りに関する悩みを、どう解決すればよいか分からない―。そうした問題に応えるため、国は経営上のあらゆる課題に対する相談や要望、苦情まで幅広く受け付ける「金融円滑化ホットライン」と「金融サービス利用者相談室」を設置している【表参照】。

また、経営改善や資金繰りを相談したい経営者のために「中小企業電話相談ナビダイヤル」を設けている。いずれの窓口も、どんな小さな相談でも気軽に利用できるほか、最終的な解決に導くための専門機関の紹介も行っている。



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