経済再生のカギ握る“3本の矢”
公明新聞:2013年1月28日(月)付
脱デフレへ総力挙げる
日本経済に深刻な悪影響を及ぼすデフレ。第2次世界大戦後の先進国で日本のように約20年もデフレが継続している例はない。政府は金融政策、財政政策、成長戦略を組み合わせた“3本の矢”で、デフレからの脱却に総力を挙げる。各政策に期待される役割と効果を解説した。
金融政策
景気回復の期待高める
2%物価目標導入 日銀、積極的に資金供給国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、今月17日の記者会見で、日本政府が取り組む大胆な金融政策を「興味深い」と期待感を表明した。また、ノーベル経済学賞受賞者で米プリンストン大学のクルーグマン教授も強力な金融緩和で景気回復をめざす新政権の政策を評価した。世界も注目するのは、政府と日本銀行(日銀)が共同声明として初めて明確化した「物価目標(インフレターゲット、消費者物価の前年比上昇率2%)」導入の効果だ。
物価目標導入の狙いは、国民の景気回復への期待感を高めるためだ。効果のイメージはこうだ。デフレは将来の景気悪化を見込んだ家計や企業が、消費や投資を控えることで起きる。そこで、日銀が「物価が2%になるまで金融緩和を続ける」と宣言し、同時に金融機関が保有する国債の無期限購入(2014年に開始)などを通じて多額の資金を市場に供給することで短期金利の低下を促す。
円高の是正で輸出増加
短期金利の低下は、企業向け融資や住宅ローンなどに適用される長期金利の低下も促すことになる。
これにより企業や家計が資金を借りやすくなり設備投資や個人消費も活発化するという仕組みだ。
さらに、金融緩和は円高是正の効果もあり、輸出増加も期待できる。現在はデフレで物価は下がり続けているが、景気が回復し始めると物価は上がる。物価を金融政策で強制的に引き上げることで、景気回復が始まったと思わせるアナウンスメント効果も期待され、需要を創出する発想だ。
財政政策
より確実に需要を創出
補正予算でGDP2%押し上げ
金融緩和で生み出された資金を具体的な形で市場に還流するための強力なポンプ役となるのが機動的な財政政策だ。
政府は、財政政策の柱として、緊急経済対策を盛り込んだ歳出総額13兆1054億円に上る2012年度補正予算案を閣議決定。
具体的には、公明党が提唱する「防災・減災ニューディール」を踏まえた「震災・復興・防災対策」に3兆7889億円を計上し、老朽化した社会インフラの補修を促す。さらに、東日本大震災で大打撃を受けた東北地方の復興を加速するため「震災復興特別交付税」の増額で、特に、津波被害に遭った個人住宅の再建事業を国が実質的に後押しする。そして、補正予算に続けて来年度予算を切れ目なく執行することで、需要の創出をより確実にする構えだ。
財政バランスにも配慮
内閣府によると、緊急経済対策による経済波及効果は実質国内総生産(GDP)を約2%程度押し上げ、約60万人分の雇用創出効果があると試算。防災・減災対策や復興事業は、コンクリートといった補修材料や建築資材など多くの関連需要を生み出すため、民間投資や消費も強く喚起されると政府は見る。ここへ金融緩和で生み出された資金の流れが加われば、景気・経済対策は一層加速するだろう。
もちろん、財政政策の実施には、12年度末で約709兆円にも達する膨大な国の借金への配慮も必要だ。政府は来年度予算編成で、新規の国債発行額を税収以下に抑え、43兆円前後とする方針で、財政バランスにも十分配慮する姿勢だ。
成長戦略
再エネなど投資を促進
税制改正大綱 住宅ローン減税など盛り込む3本目の矢である民間投資を喚起する成長戦略の狙いは、自律的で勢いのある経済成長を取り戻すことが目的だ。
政府はその第一歩として、省エネルギー(省エネ)や再生可能エネルギー(再エネ)拡大のための民間投資を促進する。具体的には、省エネ拡大に貢献する設備投資費の補助に補正予算案で2000億円を計上。また、注目される中小企業の資金繰り支援には2893億円(貸し付けなど含む事業規模10兆円超)を充て、複数債務の一本化で債務負担を軽減する借換保証(5000億円)も推進する。
経済の基礎体力強化めざす
公明党が一貫して重要性を強調する医療や農業といった成長分野への投資を進めることも重要だ。
例えば、新興国では人口増加で教育投資が年々高まっている。日本の教育ビジネスの質の高さは海外でも定評がある。まさに成長が期待できる有力産業だ。
また、13億の総人口のうち1億人以上が高齢者の中国では、日本が培ってきた介護事業のノウハウに熱い視線が注がれている。
政府は23日、さらなる産業の活性化を促すための産業競争力会議の初会合を開催。6月には規制緩和などを含む成長戦略を取りまとめる方針を示した。
さらに、来年度の与党税制改正大綱では、企業が従業員を増やした場合の法人税の減税額を増加人数1人当たり40万円に倍増することや、住宅ローン減税の4年間延長など税制面から経済活性化を促す項目を多数盛り込んだ。
デフレやグローバル競争で低下した日本経済の基礎体力を金融、財政、成長戦略生かして強化することが今こそ必要だ。
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