減少する保護司

公明新聞:2012年10月22日(月)付

人材確保を急げ

保護観察対象者や刑務所を出所した元受刑者らの更生と社会復帰を支える保護司。再犯を防ぐ重要な担い手であるが、近年は地域社会の変化などにより、新たな保護司確保が困難になり、その数は減少傾向を続けている。こうした中、法務省は人材発掘事業や活動拠点拡充などの支援策に取り組む方針を示している。保護司活動の現状と課題を探った。

「更生する姿がうれしい」
再犯防止担う地域の顔


東京都豊島区保護司会の定例研修会の様子「更生保護の一番の目的は、再犯させないことです。その抑止効果となるのが住居や仕事、そして保護司や家族をはじめとする“支えてくれる人”の存在です」―。東京保護観察所の保護観察官が保護司活動の目的と意義について、こう語り掛けていた。これは、東京都豊島区で活動する保護司で構成される「豊島区保護司会」の定例研修会のひとこまだ。

「保護司はみんな誇りを持って活動しています。平日午前中の研修会にもかかわらず積極的に参加してくれますしね」。こう語るのは、同区保護司会の仙浪博一会長だ。現在、同区では122人の保護司が活動している。

刑務所や少年院を仮出所、仮退院した人や裁判で保護観察付き執行猶予となった人など「保護観察対象者」の立ち直りを地域で支え、再犯を防ぐ更生保護活動。その根幹を支えているのが保護司だ。立場上は非常勤の国家公務員だが、活動経費として実費弁償金のみが支給される実質的なボランティアであり、保護観察官と協力しながら、保護観察対象者と定期的に面談して生活上の指導や助言を行うほか、受刑者が釈放後に円滑に社会復帰できるよう、雇用の確保や家族への働き掛けなど受け入れ態勢の調整を行う。また、犯罪防止などの啓発活動にも取り組む“地域の顔”だ。

「やはり対象者が更生していく姿を見ることが醍醐味であり、何よりもうれしいです。“先輩”として、結婚式に呼んでくれたこともありますよ」。保護司生活28年になる仙浪会長は、対象者との思い出を振り返りながら、活動のやりがいをこう強調する。同会の金杉繁一副会長も、「私と年齢がほとんど変わらない対象者を担当していましたが、その対象者が私のことを『父親のように思っていた』と聞いた時は、まるで“金メダル”をもらったような気持ちになりましたね」と感慨深く語っている。

困難な“なり手”の確保
法務省 人材発掘の専門職配置


保護司数の推移保護司の定数は5万2500人と定められているものの、今年1月1日現在、全国で活動する保護司の数は4万8221人と、年々減少傾向が続いている【グラフ参照】

「保護司の“なり手”確保は難しい状況にあり、今までにない減り方をしているのが現状だ」。法務省更生保護振興課の担当者がこう指摘するように、新たに保護司となる人数が大幅に減少していることが主な要因になっている。

従来、新たな保護司を確保するには、現役保護司の人脈や地縁関係などを軸に“候補者”を探し、依頼していくことになっているが、近年、人間関係の希薄化など地域社会の変化に伴い、以前よりも候補者を探しづらい状況にあるためだ。

同省が今年6月、全国886カ所の保護司会を対象に実施したアンケートでは、保護司を依頼して断られた経験を持つ人は約8割以上で、さらに、10年前と比較して候補者確保が「困難になった」「どちらかといえば困難になった」との回答も約6割に上っている。

こうした中、法務省は安定的な人材確保を図るため、来年度から人材発掘を専門的に行う保護司を、東京や大阪など5都市に配置する方針を示している。この保護司は、新人保護司育成や保護司に興味のある人への体験活動を担当することになり、同担当者は「地域社会が変化しても、保護司になってもらえる人は存在する。体験活動など“入り口”を広げることで、保護司活動に理解・協力してもらうことが人材確保につながる」と述べている。

こうした取り組みとともに、保護司の活動拠点である「更生保護サポートセンター」も拡充する方針だ。今年度中に全国で155カ所となるサポートセンターは、主に公共施設内に設置され、保護司が常駐している。同センターの効果については、現場の保護司からも「公共施設内に設置されることで、地域住民の保護司活動に対する認知度が高まっている」などの声が上がっている。

同担当者は「地域に保護司がいなければ、再犯を防ぐ手だてがなくなってしまう。保護司の負担を減らし、やりがいをもって活動してもらうことが重要だ」と強調している。

公明、保護司支援を一貫してリード

公明党は保護司の支援策充実について、国の更生保護制度を支える重要な存在であるとの認識から、保護観察官の増員、実費弁償金の増額のほか、出所者や保護観察対象者の再犯防止に向けた就労・居住支援を推進するなど、与党時代から一貫して取り組んできました。

党法務部会長の大口善徳衆院議員は、「年々減少している保護司の担い手確保のためには、保護司同士の情報交換の場づくり、時間的負担への配慮や軽減、実費弁償金の充実のほか、社会的評価の向上や保護観察官による処遇指導の充実などの環境整備が必要だ。今後とも保護司制度の充実に取り組んでいきたい」と述べています。

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