第33回 ヨーロッパのコミュニティサイクルを見に行ってきました。

訪問日時
訪問日時2012年〜2013年
訪問者名
長瀬祥紀(ライター)
場所
パリ(フランス)、バルセロナ(スペイン)、ブリュッセル(ベルギー)、ロンドン(イギリス)

東京、大阪をはじめ日本の大都市では自動車の路上駐車、それによって引き起こされる渋滞、事故など、車が増え過ぎたことによる問題が、いまだに解決できずにいます。

これに対してひとつの解決策を示したのがパリのコミュティサイクル。公共の自転車の導入でクルマの中心部への流入を減らし、同時に個人所有の自転車の不法駐輪の問題も解決しようとしたのです。

その試みは成功し、今ではフランスだけではなく、ヨーロッパの各都市でコミュニティサイクルが導入され、活用されています。

今回は、ヨーロッパのコミュニティサイクル事情に詳しいライターの方に、取材をもとに寄稿していただきました。

 

日本の大都市に見られる交通の混雑は、ヨーロッパの大都市でも同様であり、その解消は長年の懸案でした。

フランスのパリでは、この問題に対処するため、地下駐車場を増やし、駐車違反を厳重に取り締まるなどして路上駐車を減らすほか、駐車料金を値上げして都心部への車の流入少なくするなど、さまざまな施策をとってきましたが、決定的な解決策にはなりませんでした。

そこで人々の移動手段を車から他のものに振り向けるため、トラム(路面電車)を敷設し、バス・タクシー専用レーンを作って公共交通を優先させ、深夜でも都心から郊外へ帰れるバスを運行させるなど、さまざまな施策を行ってきました。

目標は2020年までに、パリ市内の自動車交通量を40%減少させること。

その一手段として実施されたのがコミュニティサイクル“Velib(ヴェリブ)”でした。

パリのコミュニティサイクル“Velib(ヴェリブ)”

“Velib(ヴェリブ)”とは、フランス語の「velo」(ヴェロ・自転車)と「libre」(リーブル・自由な)という言葉を合わせた造語です。

このプロジェクトは、パリ市内の自動車減少の目玉政策として2007年7月15日から運用が開始されました。

ずらっと並んだヴェリブ。シックなデザイン。

パリ市内の約1500のステーションに自転車が置かれており、初期登録をしてカードを入手すれば、いつでもどこのステーションからでも自転車の貸し出しは自由。返却もどこでも開いているステーションに返せばOK。しかも30分以内の利用なら無料という、利用者にとって大変便利なシステムです。

ヴェリブはスタート当初から世界中のマスコミで報道され、注目されました。

スタート後わずか1年で、利用者がのべ2千750万人、1年間の長期パスが20万人に上るという好調ぶりで、現在ではパリ市民はもとより訪れる観光客の足としても定着し、親しまれています。

ヴェリブが置いてある駐輪場は、パリ市内に約300メートルごとに設置されています。

駐輪場には「ボルヌ」と呼ばれるスタンドのようなものがあり、ここで利用者登録・利用料の支払い・貸し出し手続きなどが行えるようになっています。言語はフランス語、英語、スペイン語に対応しています。

  • これがボルヌ。貸し出し手続きはここでする

  • 裏側にクレジットカードの受け入れ口やテンキーがついている

ヴェリブの使い方

自転車を借りるには1年間有効のパス「カルト・ヴェリブ(29ユーロ)」を買うのが基本、旅行者など短期の使用者用には7日間有効の「チケ・ヴェリブ(5ユーロ)」や、1ユーロの一日券もあります。ボルヌは無人ですが、年中無休で24時間やっています。

使う人はカードやチケットを使って停めてある自転車のロックを開けて走り出すだけ。30分以内に、目的地のそばのチュリンポストに停めれば無料です。

自転車のレンタル料は最初の30分は無料ですが、その後の30分は1ユーロ、さらにその後は30分ごとに2ユーロと長い時間使えば使うほど割高になる仕組み。これは借りた人が自転車を独占するのではなく、使う時間を短くしてみんなで共有させるためです。

  • 借りるときは手続きをして駐輪ポストから自転車をはずす。返すときもどこのポストでもいいからきちんと停めること。このポストにはまって初めて返却したと認識される。返却しないで放置すると150ユーロの罰金

  • 3速のギアがついているから、ある程度の坂道もOK。車体の重さはママチャリよりちょっと重いぐらい

  • ワイヤーロックもついているので自転車から離れるときはしっかりロックすること。万一、誰かに乗っていかれてしまったら自分が罰金を払うはめに

パリで自転車に乗るときは歩道を走ってはいけません。必ず車道を走りましょう。日本のような調子で歩道を走ったりしたら、歩いている人、全員に怒鳴りつけられるでしょう。 一方通行道路を逆走してはいけません。対向車の運転手に怒られます。

信号無視をしてはいけません。警察官がいれば捕まりますし、自動車が来てぶつかったりしたら信号無視をした方が悪いことになります。日本でのように“交通弱者”などと言って強気に出ることはできません。交通ルールを守らない方が悪いのです。ルールを破ったら、自分がやったことの責任を取らされるでしょう。

パリに限らずヨーロッパ(というより日本以外の国すべて)では、自転車は自動車と同じ扱いです。甘えは許されません。自動車と同じ道を走るのが怖いと感じたら、自転車に乗るのをあきらめましょう。