過労死防止へ一歩前進

2014年6月18日

5月末、超党派の議員連盟が議員立法で提出した「過労死等防止対策推進法案」が衆議院を通過しました。参議院を経て今国会中に成立する見通しです。

「karoushi(過労死)」は英語の辞書にも

「karoushi」という言葉は、2002年にネット上の辞書「Oxford English Dictionary Online」に英単語として登録されるほど、世界でも広く知られる言葉になっています。
2013年、日本の過労死問題に対して国連の社会権規約委員会は、長時間労働などが原因の過労死や自殺について日本政府に懸念を示し、対策を講じるよう勧告しました。
勧告文には「相当数の労働者が過度に長い時間労働を続けていることに(委員会は)懸念をもっていること。また、過重労働による死及び職場における精神的嫌がらせによる自殺が発生し続けていることに懸念を表明する」と書かれています。

深刻な問題「過労自殺」

過労死については、これまでは実態を把握するために労災の申請件数を参考にしてきました。これによれば、「脳・心臓疾患を原因とする過労死」の件数は2012年には842件となっています。しかしそれはあくまでも過労を原因とする肉体的疾患による死者だけの数字で、過労が原因で精神障害などに陥り自殺してしまう「過労自殺」は含まれていません。
肉体的な過労が原因で死亡する過労死より、精神的に追いつめられて自殺に至ってしまう過労自殺の問題の方がより深刻な問題ですが、2012年の過労自殺は1257件に上ります。
さらに日本人の心情としては、身内が自殺をしたということはなるべく隠したいということもあり、実際の過労自殺はこの数にとどまるものではないと推測されます。

過労死防止へ「国の責務」を明記

今回の法案では過労死の定義を次のように定めています。
「『過労死等』とは、業務における過重な身体的若しくは精神的な負荷による疾患を原因とする死亡(自殺による死亡を含む。)又は当該負荷による重篤な疾患をいう」(第2条)
これまでは「過労死」という言葉の定義もあいまいで、そのため実際の過労死訴訟では過労死かどうかを争い、判例を積み重ねてきたという実態があります。今回の法律が成立すれば、やっと過労死とはどのようなことをさすのかある程度明確になります。
厚生労働省もこれまで問題解決のための取り組みをいろいろ行ってきましたが、それでも主に使われていた言葉は「過重労働」であり、「過労死」という言葉はなかなか使いにくいものでした。
その意味でも法律に「過労死」という言葉が使われ、はっきりと認知されるのは大きな前進のきっかけになるでしょう。
法案では「国の責務」を明記し、過労死対策を進めるための大綱の作成を国に求めています。また、地方公共団体、事業者それぞれに過労死対策を行う責務が定められ、国と地方公共団体には過労死の実態調査や防止策の研究、国民啓発、相談体制の整備、民間団体の活動支援を進めることも定められました。
法案の成立により、過労死を防止するための体制を整えることができるようになりますが、これはあくまでも過労死防止のための第一歩。建設的な議論を重ねて過労死の悲劇がない社会づくりを目指したいものです。