クリミア併合に世界はどう対処するのか

2014年3月26日

ロシアのプーチン大統領は3月21日、クリミア自治共和国と特別市セバストポリをロシアに併合しました。しかしこれに対してウクライナはもちろん、米国やEU各国は大反発しており、国際的には今後も波乱が予想されます。

クリミアってどんなところ?

クリミアは18世紀後半にロシア帝国に編入され、その後、1920年にソビエト連邦内の自治共和国になりました。1954年にはウクライナへ移譲され、さらに1991年、ウクライナ内で自治共和国の地位を得ました。
何度もの変遷には、民族の問題が関係しています。現在の住民の比率はロシア人58%、ウクライナ人24%、タタール人12%です。タタール人はスターリンによって中央アジアに強制移住させられていたという経緯があり、ロシアに対しては好意的ではありません。
クリミアは黒海に面しており、ソ連崩壊後ウクライナが独立した後もロシアの黒海艦隊はクリミアに駐留し続けています。ロシアにとって不凍港であるセバストポリは重要な戦略上の拠点なのです。

欧州とロシアの狭間で

ウクライナは欧州とロシアとの間で揺れ動いている国です。以前は親欧派のティモシェンコ元首相が政権を握っていましたが、EUへの加盟問題などをきっかけにその地位を追われ、親ロシア派のヤヌコビッチ大統領に政権が変わりました。しかしEU加盟への国民の願いは強く、大統領がEU加盟を見送るという政治決断を下したことがきっかけでデモから暴動に発展し、大統領は追放され新しい政権が誕生しました。
ウクライナの首都キエフで親欧州派の新政権が誕生した数日後、南部のクリミアでは新政権支持派とロシア支持派の衝突が起こりました。こちらでは民衆ではなく武装集団が行政府と議会を占拠。翌日には軍用空港と民間空港も武装集団によって封鎖されました。
武装集団の正体は明らかではありませんが、欧州と米側は駐留ロシア軍が主力となった部隊と見ています。
ロシア勢力はセバストポリに停泊していたウクライナ海軍の主な艦艇も接収し、現在クリミア半島はロシアにより実効支配された状態となっています。

クリミア、疑惑の住民投票

3月11日、クリミア自治共和国最高会議はウクライナからの「独立」を採択しました。16日には住民投票が行われ、96.77%がロシアへの編入を支持するという結果になりました。しかし、クリミアのタタール人は投票のボイコットを表明していましたし、ウクライナ人などロシアに編入することに反対の人は投票に行かなかったものと思われます。
クリミアにある空港への乗り入れはモスクワ便以外は16日まで制限されていましたし、道路もロシア軍が実行支配して封鎖されていました。
このような状況で行われた住民投票に信憑性があるとはとても思えません。
クリミアが、まずウクライナからの独立する必要があったのは、「領土の変更はウクライナ全土での国民投票が必要である」という憲法があるためです。つまりいったん独立しておいて、その憲法にしばられない状態になって、ロシアに編入してもらおうということです。
ウクライナ新政権と欧米はこの投票を認めず、トゥルチノフ大統領代行は14日、この「独立宣言」を無効とする大統領令を発令しています。

国連は無力なのか

3月15日の国連安全保障理事会においてクリミアの住民投票を「無効」とする決議案が提出されましたが、ロシアの拒否権行使により否決されました。またこの時、理事会に参加していた中国は棄権しています。
今の国連安保委員会では、常任理事国のどれかが拒否権を発動してしまえば何も決めることができません。大国が国際秩序を脅かすような行動をしても、国連としてはそれに対応する手段がないということになります。
国連がこのような事態に無力であるということが、現実になってしまったことは深刻です。
中国は日本の尖閣諸島だけではなく南沙諸島など周辺への膨張圧力を強めています。ロシアと同じく安保理事会で拒否権を持っている中国は今回のケースは強い関心を持って見ているでしょう。
武力の行使によるのではなく政治交渉の力で我が国の安全を守る、高度な外交努力が求められています。