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新型コロナ 妊婦に寄り添う支援始まる
新型コロナウイルス拡大の影響で、自治体が妊婦らを対象に開く両親学級の中止が相次いでいるほか、里帰り出産や、家族の出産立ち会いを制限する状況が続いている。オンラインなどを活用し、孤立しがちな妊婦の不安や悩みに寄り添う取り組みを紹介する。
両親学級中止で情報不足
出産への不安に対応
「新型コロナの影響で区の『母親学級』は中止。妊婦健診も家族が付き添えない状態です」――。こう語るのは、東京都練馬区に住む山里麻美さん(35)。10月上旬に第2子の出産を控える中、長男・凜久君(2)の予防接種などで利用していた病院で4月に集団感染が発生した。「かかりつけの病院だったので不安が大きい」と表情を曇らせる。
夫の陽介さん(37)は職業柄、テレワークを導入できず、毎日、自転車での通勤を続ける。「自分がウイルスを持ち帰っていたらと思うと心配で。なるべく人混みを避けている」と話し、妻子と生まれてくる子の健康を気遣う日々だ。
自らの感染も懸念
妊娠・出産・育児を専門に扱う情報メディア「たまひよ」は4月30日、妊娠中または、子どものいる女性4411人を対象に行った、新型コロナの影響に関する意識調査の結果を発表した。
出産への影響で最も多かった回答は、「両親学級などの中止による情報不足」(61.0%)。次いで、「入院中の面会ができない」(55.1%)、「出産時の配偶者・パートナーの立ち会いができない」(51.8%)などが上位を占めた(複数回答)。
ゴールデンウイーク中、厚生労働省が妊産婦向けの臨時相談ダイヤルを開設したところ、全国から832件の相談が寄せられ、「自身や子どもの感染を疑っての相談が最も多かった」という。
LINE使い医療相談
自治体も電話窓口開設
不安に陥りがちな妊婦を支える取り組みも動き始めた。経済産業省は6月26日まで、無料通話アプリ「LINE」を活用して医師や助産師が相談に応じるサービス「産婦人科オンライン」「小児科オンライン」 を無償提供する。今年度補正予算による支援事業で、期間中は何度でもアクセスが可能だ。
利用方法は「予約制相談」と「いつでも相談」の2種類。予約制相談はLINEのビデオ通話、音声通話、メッセージのいずれかの方法で10分間、直接、医師らと会話ができる。「いつでも相談」では24時間、質問メッセージを受け付けており、1日以内に専門家が回答を返信する。事業を担う株式会社「Kids Public」代表で小児科医の橋本直也氏は、「病院で待っているだけでは手を差し伸べられない不安や孤立に、オンラインで寄り添っていきたい」と話す。
一方、自治体でも東京都が16日に「妊娠相談ほっとライン」を拡充して新型コロナに対応したオンライン相談の受け付けを始めたことで、47都道府県全てに妊婦向けの電話相談窓口が開設された。厚労省のホームページには全国の相談窓口が公開されている。
困難な時期に宿った命。自信持って臨んで
じょさんしonline 杉浦加菜子 代表
オンラインで個人相談や両親学級を開催している任意団体「じょさんしonline」の杉浦加菜子代表(助産師)に、妊娠中の人や家族へエールを寄せてもらった。
4月に全国から約200人の助産師の有志を募り、オンライン両親学級を企画したところ、約800組の参加がありました。最初は皆、大きな不安や孤独を抱えていましたが、画面越しでも助産師や他のお母さんと関わることで、参加者には「同じ状況下で頑張っている人がいる。一人じゃないと勇気が出た」など、前向きな変化がありました。
今まで当たり前に思っていた里帰り出産や立ち会い出産ができないことで落ち込んでいる人も多いです。それでも、おなかの赤ちゃんは毎日、元気に成長していることに変わりはないし、近い将来、必ず出産の日を迎えます。
この困難な時期に命が宿ったことには、何かきっと大きな意味があるはず。おなかの赤ちゃんは、この困難を乗り越えられる人として、ママや家族を選んだのだと思います。今、妊娠していることに、どうか自信を持って出産に臨んでください。