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2020年5月20日

コラム「北斗七星」

<海水がふくれ上って、のっこ、のっことやって来た>。作家の吉村昭は著書『三陸海岸大津波』で漁師の言葉を使って、チリ地震津波を表現した。60年前、約1万7000㌔離れたチリの大地震で起きた大津波は、23時間後の5月24日未明、日本列島に到達。とりわけ三陸沿岸に甚大な被害をもたらした◆以来、宮城県南三陸町では、チリ地震津波の水位を示す看板を町内各地に設置し、住民参加の避難訓練を毎年行った。だが9年前の東日本大震災は、その想定をはるかに超え、数多くの人命を奪った◆南三陸消防署では、消防隊員8人が活動中に殉職。山内吉勝さん(当時58歳)は、消防署付近で車の誘導に当たっていた際、津波にのまれ犠牲となった。震災後、がれきの中から見つかった吉勝さんのかばんには、10枚の原稿用紙が入っていた。『伝える』とのタイトルで、住民の記憶が薄れつつあったチリ地震津波を教訓にした防災講演の内容だったという◆「『防災』、災いを防ぐ防災が、災いを忘れる『忘災』にならないように」。原稿に書き残されている、この言葉を妻の美代子さんは吉勝さんのお墓に刻んだ◆「消防、警察、自衛隊の人も危険な時は、逃げて自分の命を守って」「私たちと同じ思いをする人が、もう出ないように」。美代子さんの願いである。(川)

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