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新型コロナ 外出自粛でDV増加の懸念
暴言、暴力、虐待
“在宅”続き発見遅れも
新型コロナウイルスの影響による外出自粛や経済・雇用情勢の悪化などにより、DV(配偶者などからの暴力)や児童虐待の増加が懸念されている。海外ではDV被害が増加しており、日本政府も防止策を強化する。相談支援の現場から実情を探った。
「外出自粛で家族が一緒にいる時間が増え、ささいなことで言い争いが多くなったとか、経済的な不安から夫がイライラしているといった相談が増加している」。こう話すのは、DV被害者の支援に取り組む一般社団法人「エープラス」の吉祥眞佐緒代表理事だ。在宅勤務で夫が家にいるために、相談できない妻も多く、同法人では今月12日からLINEによる相談を受け付けたところ、暴言や暴力に関するものなど、多い日には1日40件の声が寄せられたという。
日本では夫がつらい時に、それを支えるのが妻の役目という風潮が強いと吉祥代表理事は指摘。その一方で、「大変なのは女性も同じ。なぜ家族で力を合わせて乗り越えようとならないのか。精神的暴力もDVだという認識がまだまだ薄い」と警鐘を鳴らす。
子育てに関する相談を受け付けている社会福祉法人「子どもの虐待防止センター」にも、3月中旬以降、新型コロナに関係する相談が増え始めている。担当者によると、子どもとの外出を非難されたケースや、乳幼児の生活リズムが崩れて親自身も眠れないといった相談が目立つという。同センターは「先行きが見通せない中で、イラつき、やるせなさの高まりを感じる。ギリギリの精神状態で、お母さん方は虐待になる一歩手前で必死に踏ん張っている。何かうまくいかないと感じたら、遠慮なく各種窓口に相談してほしい」と呼び掛ける。
「情報出にくく」
東京や大阪、北海道の児童相談所や子育て支援担当課に問い合わせたところ、児童虐待の受理件数に大きな変化はなく、逆に減少している地域もあった。北海道中央児童相談所の担当者は、「学校休校の長期化や、保健師などとの交流がなくなったことで発見の機会が激減し、情報が出にくくなっているのではないか」と現状に懸念を示す。
国連も危機感表明
新型コロナウイルスの感染拡大により、各国ではロックダウン(都市封鎖)や高額の罰金を科すなど厳しい外出禁止措置が取られている。フランスでは外出禁止となった3月17日以降、DV被害が1週間で30%以上増え、英国では電話相談が65%も増えたとの報道がある。
こうした事態に国連のグテレス事務総長は、5日の声明の中で「多くの女性や女児にとって、最も安全であるべき場所に危機が迫っている」との危機感を表明。世界的にDVが急増しているとして、世界各国に対応を強く求めた。
日本 SNSなど新たな相談体制拡充
「DV相談+」の電話相談を受ける女性スタッフ=25日 都内(画像の一部を加工しています)
内閣府はDVの相談体制を拡充するため、20日から新事業「DV相談+」をスタートさせた。既存の全国共通ダイヤル「DV相談ナビ」は、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながるものだが、各センターの受付時間内の対応に限られていた。このため、新事業ではSNS(会員制交流サイト)やメールでの相談のほか、24時間体制の電話相談が導入されている。あす5月1日からは10カ国語の多言語対応も始まる。
「DV相談+」の問い合わせは(℡0120-279-889)まで
被害者の居場所確保は急務
党ストーカー・DV・性暴力等対策推進プロジェクトチーム座長 山本香苗 参院議員
「ステイホーム」が呼び掛けられている一方、家に居場所がなく、苦しんでいる人がいます。公明党は3月31日の政府への緊急提言の中で、DVや虐待などの相談体制の拡充を求めました。
DVについては、電話(24時間無料)、メールに加え、初めてSNSを活用した相談体制が開設されました。5月から各自治体で給付が始まる「特別定額給付金」については、DVによって住民票を移さず避難している方が、避難先の自治体で受け取れるよう、取り組みます。
学校休校が続く中、多くの子ども食堂や学習支援などが休止となり、居場所をなくしている子どもや若者たちがいます。先ごろ、「子どもの見守り強化アクションプラン」が公表されましたが、子どもだけでなく家庭全体を見守る取り組みが必要です。安心して過ごせる居場所の確保を含め全力で取り組みます。