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新型コロナ 「正しく恐れる」ために確かな情報に触れよう
厚労省HPの「Q&A」など
新型コロナウイルスの脅威から自身や大切な人を守るため、確かな情報に触れ、“正しく恐れる”賢明な行動が求められます。参考になるウェブサイトを紹介するとともに、最前線で治療に当たる国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長に助言をもらいました。
事実を判断のよりどころに
新たな感染症との闘いは相手が目に見えないウイルスだけに、過度に不安がったり、油断したりしがちです。こうした中で大切なのは、多くの識者が指摘している通り、確実に分かっている事実を判断のよりどころにすることです。
事実を知る近道は、やはり政府の公式発表です。特に厚生労働省が発信する情報は、感染症をはじめ、さまざまな分野の専門家の知見が反映されています。新型コロナに関する新聞やテレビの報道内容も、厚労省の資料などを情報源にしています。
政府の広報というと“お堅い”印象がありますが、厚労省ホームページ(HP)にある「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」では、基本的な疑問の答えが丁寧に解説されています。Q&Aのページは随時更新され、同ウイルスの特徴や予防法など計44の問いに回答しています(4日現在)。
また、経済産業省は、厚労省などと連携し、一人一人にできる感染症対策を子どもに分かりやすく伝える動画を作成しました。人気俳優が登場し、手洗いや普段の健康管理、簡単なマスクの作り方などを紹介しています。動画はユーチューブに公開されており、視聴数が50万回を超える好評ぶりです。
行政の支援策がすぐに見つかるよう、首相官邸HPでは総合窓口となるページを開設しています。ここを見れば、「売り上げ激減で事業を継続できない」「公共料金の支払いが困難」など、個別のニーズ(要求)に対応した支援策へアクセスできます。
私たちの行動が命運握る
国際感染症センター長 大曲貴夫氏に聞く
――さまざまな情報や臆測が飛び交う中、冷静な行動が大切です。
そのためにまず、事実をきちんと知ることです。私は厚労省HPの「Q&A」を薦めます。絶対にうそがあってはならないからファクトチェック(事実の検証)が非常に厳しく、信頼できます。その上、政府が公表する情報の中では比較的分かりやすい内容でしょう。
――治療現場は今、どういう局面ですか。
2週間ほど前から患者が明らかに増え、当院のような感染症指定医療機関だけで対応できる段階は過ぎました。一般の医療機関にも病床を確保し、患者を入れてもらわないと追い付かない状況です。
また、感染が疑われる人向けの「帰国者・接触者外来」の件数も増えており、全体の5%が陽性です。この方々は外来窓口に歩いて来るわけですから、町中を行き来する人の中に一定の割合で陽性者がいることになります。
――3月25日の東京都の記者会見で、新型コロナの“怖さ”に言及され、衝撃を受けた人も多かったです。
感染者の8割は軽症で済みますが、2割の人は確実に入院が必要になる。そして悪くなる時のスピードが速い。数時間前まで話ができていた患者が一気に、人工呼吸器を付けないと助けられない状況になる。ものすごく怖いです。
会見では、こうした現場で見たままの事実を話したに過ぎません。当然、多くの人が共有している認識だと思っていましたが、そうではなかったようです。単純に話を聞いたり文字で読んだだけでは、危機をリアルに想像するのは難しいのだと改めて痛感しました。
――一人一人の行動がますます重要になってきます。
その通りです。具体的には「密閉」「密集」「密接」という“三つの密”を避けることに尽きます。結局は個人の自覚の問題であり、行動が命運を握ります。
この闘いは“長いマラソン”
山中伸弥・京大教授が特設サイト
2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授が、新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向けたHPを3月13日に開設し、話題を集めています。
山中教授は、世界で初めて、再生医療への応用が期待される人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製に成功した遺伝子の専門家。感染症や公衆衛生の専門家ではありませんが、「国難である新型コロナウイルスに対し、医学研究者として何かできないかと考え、情報発信を始めることにしました」と述べています。
HPでは、同ウイルスの特徴やインフルエンザとの違いを解説しているほか、関連する科学論文の成果などを紹介しています。
また、山中教授は、同ウイルスとの闘いを「1年は続く可能性のある長いマラソンです」と強調し、息の長い取り組みを訴えています。