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【主張】ジェンダー平等 女性の地位向上への努力足りぬ
人が集まって暮らす社会やその文化的な影響を受け、男性または女性はこうあるべきだと決め付けられてしまう社会的・文化的な性差を意味する「ジェンダー」。
この言葉が初めて国際会議で公式に使われてから、今年で25年の節目を迎える。1995年に国連の第4回世界女性会議が北京で開かれ、「ジェンダー平等」の実現をめざす取り組みの指針となる「北京宣言」が採択された。
これ以降、ジェンダー平等という考え方は、女性の活躍を促進するための各国の政策を支える土台となっている。この意義を、あらためて思い起こしたい。
ジェンダー平等に向けた努力の一つとして、女性の就業率の向上が、特に先進国で進められてきたことは評価できる。スウェーデンなどの北欧諸国は女性の就業率が7割を超える。英国も7割近く、米国なども6割以上と高い。
日本も、これらの国に負けていない。総務省の労働力調査によると、2019年の15~64歳の女性の就業率は、過去最高の71%に上るという。
しかし、世界全体で見ると女性の就業率はまだまだ低い。国際労働機関(ILO)の報告書によると、19年の世界全体の男性の就業率が74%である一方で、女性は47%と低い水準にある。
今月9日に開催された国連の「女性の地位委員会」(CSW)の年次会合は、この状況を深く憂慮し、北京宣言から四半世紀が過ぎようとしている今も、「ジェンダー平等を完全に達成した国はない」との懸念を示した。
CSWのこの指摘はもっともだ。先進国の場合も、ジェンダー平等が実現されているとは言えない。国会議員や管理職に就く女性を増やすなど、女性の地位向上に向けた努力が不十分であるためだ。
この点、特に、日本は取り組みを急ぐべきだ。日本の15~64歳の働く女性の54%は非正規雇用であり、正社員になれず、不安定な立場や低賃金に苦しむ女性も少なくない。
政府は昨年12月、公明党の提言を踏まえ、「持続可能な開発目標」(SDGs)実現のための実施指針を改定し、ジェンダー平等を優先課題の一つに掲げた。これに一層力を入れていくべきである。