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【主張】新幹線のバリアフリー 快適、便利であることが重要だ
単に利用できるだけでは不十分だ。快適さや利便性を感じられてこそ、バリア(障壁)が取り除かれていると言えよう。
国土交通省は3日、新幹線に新たな車いす用スペースを設けることなどを盛り込んだバリアフリー対策の基本方針を発表した。
具体的には、▽窓に面している▽車いすが通路にはみ出さない▽大型の車いすでもグループで利用できる――などを車いす用スペースの要件とし、ネット予約にも対応する。
現在の車いす用スペースは通路側にある上、面積が狭く、車いすが通路にはみ出てしまう。このため車いす利用者は、車内販売のカートが通るたびにデッキに出なければならないなど窮屈な思いを余儀なくされている。
数も限られている。例えば、東海道新幹線は全1323席のうち、車いすの利用者が使えるのはわずか2席だ。位置も離れているため、車いす利用者同士が一緒に過ごすことができない。
また、車いす用スペースを利用するには原則として、電話や窓口で2日前までの申し込みが求められている。発車直前までスマートフォンでも予約できる通常座席との違いは大きい。
車いす利用者が、こうした不便を強いられている現状は放置できない問題であり、国交省の基本方針は妥当である。公明党も国会質問で新幹線の車いす用スペースの改善を訴えてきた。事業者は積極的に取り組んでもらいたい。
忘れてはならないのは、今後検討される席数や車内のレイアウトについて、当事者の声をしっかりと反映させることだ。所定のバリアフリー基準を満たすことは当然として、他の乗客と同様に、車いす利用者がどうすれば気持ちよく使えるかとの視点が欠かせない。
赤羽一嘉国交相(公明党)が会見で述べたように「新幹線のバリアフリー化は、共生社会実現の象徴」である。
折しも東京五輪・パラリンピックを控え、交通機関だけでなく公共施設や道路などのバリアフリー化が急速に進められている。障がい者でも快適に使えるのか、ハードとソフトの両面から、しっかりと目配りすべきである。