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2020年3月7日

コラム「北斗七星」

「救助隊にヒーローはいらない」。最近、懇談した消防職員の言葉だ。特別救助隊長も務め、数々の修羅場を踏んできたベテランだ。ヒーローになることを認めてしまえば、若い隊員などは無鉄砲になる。災害現場で負傷すれば、ほかの隊員の負担も増え、助けるべき人を救えなくなる。“命懸けの救出劇”など必要ないという◆彼が若き日に駆け付けた火災現場でのこと。「子どもが2人、家の中にいるんです!」と半狂乱になった母親が叫んでいる。彼は焼けた家に再び飛び込み、まさかと思い向かった風呂場で、焼け落ちて積もった残骸を取り除くと、幼い兄妹が寄り添って息絶えていた。救えなかった。この時の記憶が彼の脳裏から離れない◆ただ貴い命を救いたい。危険な現場に踏み込むが、自身の安全も確保しなければならない。周囲からの賞賛など望まない。「厳しい訓練に耐えてきた自分だからこそ、救える命があるという使命感だけ」だと言う◆きょうは、70年前に制定された「消防記念日」。例年この日を中心に行われるさまざまな行事が、今年は新型コロナウイルス対策のため縮小された◆だが、危険と隣り合わせで闘う勇者が、わが街にいることを思う日としても良いのでは。「当たり前の仕事をしているだけ」と言う彼らは、望まないだろうが、ヒーローに見える。(三)

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