ニュース
災害マネジメント総括支援員
被災自治体の迅速な復旧 サポート
現地で適切な対応策 助言
いつ起こるか分からない自然災害に遭った被災地の早期復旧に向けて、他の自治体から応援に駆け付け災害対応に当たる災害マネジメント総括支援員(総括支援員)。罹災証明書の発行などに詳しい職員らと共に「総括支援チーム」を構成し、被災市区町村の首長に応急対応の助言などを行う。被災地で縁の下の力持ちとして奮闘する総括支援員を追った。
罹災証明書 早期発行を後押し 愛知県→栃木・栃木市
「待ったなしの災害対応が迫る中、総括支援員のアドバイスに助けられた」。栃木県栃木市の糸井孝王危機管理課長は、発災当時を振り返り、こう語った。
2019年10月、東日本台風(台風19号)で永野川が氾濫し市内各所が浸水した。同市には愛知県から総括支援員らが駆け付けた。市は総括支援員らの助言をもとに家屋被害調査を市内全域で行い、被災者支援に必要な罹災証明書の発行や街の早期復旧に全力を挙げた。
愛知県から急行した岸田卓己・県産業保安室長は、同県最初の総括支援員。東日本大震災などで災害対応を経験した。罹災証明などに詳しい同県職員3人と総括支援チームとして栃木市に入り、家屋被害調査の計画作りに当たった。岸田氏は、市内約2万棟の住宅などを80人40班体制で全棟調査する案などを市長らに提案。1次調査で外観チェックを進め、2次調査では被害の大きい家屋の住人から聞き取りを重ねながら、罹災証明の家屋調査も加速させた。
さらに岸田氏は、栃木市からの要望を受け、愛知県を通じて応援職員の増員を依頼。愛知県下の自治体職員延べ45人が、10月25日から11月12日まで家屋被害調査などを担当した。岸田氏らを派遣した愛知県は、被災自治体を都道府県・政令市が原則1対1で支援する対口支援団体でもあり、円滑に応援職員を派遣できた。
総括支援員は、災害対策に精通する都道府県・政令市の管理職経験者が対象。総務省への登録者数は18年発足当初の約3倍、214人に上る(20年2月末現在)。総務省公務員課応援派遣室の寺田博文課長補佐は、総括支援チームについて「対口支援団体の先遣隊としての役割もある。必要な応援職員などを把握し、被災地の迅速な復旧を後押ししていきたい」と話す。
避難所運営 6カ所で都職員応援 東京都→千葉・君津市
昨年9月9日、関東地方に上陸した房総半島台風(台風15号)の被害で、市内の多くの家屋が停電した千葉県君津市。同市危機管理課の占部和裕課長は、「災害対応の職員が不足する中、総括支援員らのサポートがあって避難所運営などに道筋ができた」と語る。
東京都から総括支援員が来ることになり、市長らは都の総括支援員に相談。都からは第1陣として、避難所運営などに当たる56人の応援職員を得た。同市は8カ所の避難所で食料や乾電池、ブルーシートを被災者に供給し続け、このうち6カ所で都の支援を受けた。
都から現地に入った松尾尚之総括支援員(都職員共済組合事務局管理部会計課長)は、防災担当経験のある都職員として熊本地震、西日本豪雨で愛媛県大洲市の支援を経験。都では初の総括支援員だ。発災4日目の13日夜に上司から打診を受け、翌14日朝には市役所での対策会議に参加。まずは、「現場ニーズをいち早く把握すること」を心掛けた。
君津市では、電気や水道などライフラインの被害が甚大だった。停電が最大3万7700戸、断水は最大1万3000戸に達した。市街地の明かりが乏しい中、松尾氏らが開設し続けることの重要性を助言した避難所は、「被災者のよりどころ、一人住まいの高齢者の“駆け込み寺”的存在になっていた」(松尾氏)。ここには災害情報のほか、他の自治体の給水車や自衛隊の仮設風呂なども集結した。
松尾氏に替わり、第2陣の総括支援員として君津市に入った小野勝利・都コンプライアンス推進課長は、「被災地を支援することで、職員も実際の災害対応を経験できる。防災対策のノウハウを自治体間で共有できれば災害対応力も向上するに違いない」と述べる。
公明 効果的な支援強化訴え
公明党は、災害に強い街づくりの観点から被災自治体への職員派遣の充実など、きめ細かな被災者支援システムの拡充を推進してきた。
17年8月、党総務部会が総務相に行った「18年度概算要求に関する重点政策要望」では、さまざまな自然災害に迅速・的確に対応できる自治体の対応力強化を申し入れ、災害マネジメント総括支援員研修費用の予算化につなげた。20年度予算案の重点政策提言でも、被災自治体へのサポート体制充実を訴えるなど、効果的な復旧支援確立を一貫して後押ししている。