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BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)保険適用へ
頭頸部がんの放射線治療
20年度中 手術困難な人に高い効果
ホウ素と中性子の核分裂反応を利用してがん細胞のみを的確に破壊する次世代の放射線治療法「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)に公的保険を適用へ――。厚生労働省の部会は、2月19日に中性子の照射装置、同26日にホウ素薬剤の製造・販売の承認をそれぞれ了承した。1カ月以内に正式承認される。承認を受け、機器と薬剤を製造する企業側が厚労省に公的保険の適用を申請し、2020年度中にBNCTが対象に加えられる見通し。
BNCTの対象は、顔面から首までの頭頸部のがん患者で、手術での切除が困難であることなどが要件。BNCTでは、がん細胞に取り込まれやすいホウ素薬剤を点滴で患者に投与。その上で、中性子線を患者に照射すると、がん細胞に取り込まれたホウ素が、リチウム原子核とアルファ線(放射線)に核分裂し、発生したアルファ線が、がん細胞を内部から破壊する仕組みだ。
BNCTは、低いエネルギーの中性子線を用いる上、ホウ素と反応して発生したアルファ線が、細胞一つ分のごく短い距離しか飛ばないため、周辺の正常な細胞を傷付けにくいとされる。
手術が難しい頭頸部がん患者21人を対象にした治験では、治療から90日後に、がんが消えるなど効果が出た「奏功率」は約71%だった。脱毛などの副作用は、すべての患者でみられた。
BNCTの保険適用に向け、公明党は、国会質疑で訴えるとともに、厚労部会(部会長=高木美智代衆院議員)と社会保障制度調査会(会長=桝屋敬悟衆院議員)が昨年11月に就労と治療の両立の観点から診療報酬で高く評価するよう要請。また、がん対策推進本部(本部長=秋野公造参院議員)は、実用化に取り組む各地の研究施設を地方議員と共に視察するなど、国と地方で連携してBNCTの実用化を後押ししてきた。