ニュース
コラム「北斗七星」
支局近くのファストフード店によく行く。先日、店に近づくと、電動車いすの女性と介助者が入るところだった。女性にはまひがある。入り口にメニューの看板があったり、ドアの幅が狭かったりで、入店も容易でない。北斗子も続いた◆女性らは注文を考えるため順番を譲ってくれたが、店が混んでいて、番はすぐには回って来ない。待つうちに女性らが注文を決めた。先に頼んでもらおうと思い「決まりましたか?」と声をかけた。介助者を通じて「お先にどうぞ」と返事が来た。腰をかがめて「ありがとうございます」と言った。女性は懸命に体を動かし、笑顔を返してくれた◆アンパンマンの作者、やなせたかしは言う。「人間が一番うれしいことはなんだろう? 長い間、ぼくは考えてきた。そして結局、人が一番うれしいのは、人をよろこばせることだということがわかりました」。一番楽しくうれしいことは「よろこばせごっこ」。これが彼の答えだった。『(愛蔵版)やなせたかし 明日をひらく言葉』(PHP研究所)で知った◆仕事も家事も雑用も「よろこばせごっこ」ととらえることにした。「誰かが助かる、笑顔になる」と思えば、苦にならない。腰が軽くなった◆よろこばせごっこは言葉でもできる。例えば「お先にどうぞ」「ありがとう」だ。(直)