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女性活躍 中小企業にも
「行動計画」を義務付け
22年4月から 従業員101人以上が対象
昨年5月、公明党の訴えで女性活躍推進法が改正され、民間については大企業だけに課されていた行動計画の策定義務が、2022年4月からは中小企業にも拡大される。公明党の斉藤鉄夫幹事長(衆院議員)は1月23日の衆院本会議代表質問で、政府に中小企業の計画策定に向けた支援を促し、女性が働きやすい環境づくりを一層強力に推進する決意を表明した。モデル事例を含め、行動計画の内容を紹介する。
今回の改正法により、従業員101人以上300人以下の中小企業には新たに行動計画の策定が義務付けられることになった。
職場での女性活躍の進め方には大きく四つのステップがある。
まず、▽採用者に占める女性の割合(女性採用比率)▽男女の平均勤続年数の差▽労働時間の状況▽管理職に占める女性の割合――について、把握し分析する。次に、これを基に、各社にとって課題が大きいと考えられるものについて、一つ以上の数値目標などを盛り込んだ行動計画を策定し、社内への周知と外部への公表を行う。
その後、対象企業は行動計画を策定した旨を都道府県労働局に届け出る必要がある。取り組みの実施、目標の達成状況などは各社が定期的に点検・評価し、取り組み状況が優良な企業には、厚生労働省が女性活躍推進法認定マーク「えるぼし」に認定する。厚労省の担当者は「企業のイメージアップに役立ててほしい」と呼び掛けている。
行動計画を策定すると、メリットもある。国や地方自治体で行われる公共調達で加点評価を受けられたり、目標を達成した企業には助成金が支給される。
昨年12月末時点で、従業員300人以下の中小企業のうち6436社が行動計画を届け出ている(厚労省まとめ)。
(先進事例)環境整備し生産現場へ積極登用
朝倉染布株式会社(群馬・桐生市)
義務化を前に、行動計画を策定した中小企業がある。女性が働きやすい環境づくりに励む朝倉染布株式会社(群馬県桐生市)もその一つだ。染色加工や風呂敷の製造を行う同社は、16年9月に行動計画を策定・公表した。
事務職や品質検査の部署に女性社員が偏っていたことから、同社の行動計画では、生産現場に女性社員を1人以上増員し、女性自身のキャリアアップにつなげることを目標に掲げた。
まず、朝倉剛太郎代表取締役社長と大塚博美総務部長が取り組んだのが、女性社員一人一人との面談だった。「男女の体力差に不安を抱えながらも、生産現場を希望する女性がいた」(大塚部長)ことが分かった。
早速、女性が現場でも働きやすくなるよう、染めた布を運ぶ電動のワゴンを導入した。育児中の女性にも考慮し、年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにするなど、柔軟な雇用環境を順次、整えていった。
この結果、計画期間中(16年9月~20年4月)に、生産現場に女性社員2人を配置することができた。「実際に働いてみて、子育てに配慮した環境があるので助かる」と、女性社員からの評判も上々だ。
同社は17年に「えるぼし」を取得した。これをきっかけに、新卒女性が応募。本人の希望もあって、営業職に初めて登用するなど活躍の場を拡大し、女性従業員の勤続年数も延びている。
朝倉社長は「女性が生涯働ける職場づくりに向け、行動計画の策定に踏み切った。人材難の解消にもつながった」と手応えを語っている。
女性活躍推進法
2015年に制定。男女共同参画の観点から、女性が働きやすい環境づくりを進めるのが狙い。国や自治体、民間事業主に対し、女性採用比率など数値目標を盛り込んだ「行動計画」の策定や実施状況の公表を16年から義務付けている。