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“絆”深めて復興へ 住民が挑む新しい地域づくり(下)
北海道胆振東部地震 被災地・安平町からの報告
高校生も協力 子どもの居場所に心砕く
「この町 もっと好きになって」
積み上げられた段ボール、色とりどりの画用紙や折り紙、そして絵本の数々……。お気に入りのものを手にしては、「できた!」「かわいい」と子どもたちがはしゃぐ。今年1月、北海道安平町の教育委員会が児童らを対象に取り組む「遊育推進事業」の催しを、交流施設「ENTRANCE」で開いた。
一昨年9月の胆振東部地震により、しばらく小学校などは休校。公園の遊具も多くが破損した。その後、復旧工事などが進むものの、落ち着かない状況が続く。子どもたちが心置きなく遊べる“日常”は奪われたままだ。
「地域の宝である子どもたちのために、遊び場を確保してあげたい」。遊育推進事業の催しを「ENTRANCE」で開くことを提案したのは、石川恵理さん。地域おこし協力隊として遊育推進事業に携わる一方、復興ボランティアセンターの一員でもある。子どもたちが日常的に「ENTRANCE」へ集まるきっかけを提供したかったのだ。
今回の企画を練るに当たり、石川さんは、日頃から「ENTRANCE」を利用する地元の高校生に相談。2人の高校生が石川さんの熱意に触れ、放課後に集まっては何度も意見交換を重ねた。
催しでは、高校生自らが率先して大きな段ボールハウスを用意し、図画や工作の講師を務めた。道立追分高校3年生の村井翔一さんは、「地元が好き。少しでも子どもたちのためにと、無我夢中で取り組んだ」と爽やかに語った。
町教育委員会の三上泰明主査は、今後も「ENTRANCE」を同事業で活用する考えを示し、「子どもたちの居場所づくりを通して、少しでも心のケアにつながれば」と述べている。
地域の若者が立ち上げた「ENTRANCE」は、子どもたちからお年寄りまでが集う“憩いの場”に定着しつつある。今後、町健康福祉課では認知症カフェとして活用することなども検討している。
復興ボランティアセンターの井内聖センター長は「復興への道のりは始まったばかり。住民の皆さんに震災前よりもこの町をもっと好きになってもらいたい」と強調し、さらなる挑戦を模索する。