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災害時でも 早期に授業再開
全小中学校で 避難所利用計画
愛知・豊橋市
愛知県豊橋市は昨年8月末までに全小中学校の各校ごとの避難所利用計画を策定。現在、同計画の災害時の実効性を高めようと、学校と自治会が連携して学習会やフィールドワーク(現地調査)を行うなど「多くの校区で反響が広がっている」(市防災危機管理課)。利用計画の導入を提案し、推進してきた公明党の沢田都史子市議がこのほど、鈴木博、尾林伸治、宍戸秀樹、梅田早苗の各公明市議と共に同市役所内で防災危機管理課と教育委員会の職員に現状を聞いた。
開放スペースを事前に決定
避難所利用計画の活用状況について防災危機管理課と教育委員会から聞く沢田市議(左から2人目)ら公明党市議団(左側5人)
同計画の目的は、避難所となった学校ができるだけ早期に授業などの教育活動を再開できるよう、避難所として開放できる教室などのスペースと、それ以外の施設の利用方法を事前に決めておくこと。
例えば、市立向山小学校の利用計画では避難者の居住スペースの優先順位が決められ、最優先の体育館の次は、3階建て校舎の1階にある普通教室。次は2階、3階のそれぞれの特別教室というように下の階から割り当てられている。これは、「避難所のまま学校を再開する時、3階の教室が避難スペースになっていると避難者が1、2階の教室を通っていくことになってしまう」(市防災危機管理課)からだ。介護室、救護室、ペットや補助犬の部屋、要配慮者用のトイレ(1階)、授乳・おむつ交換室(2階)なども詳細に決められている。こうすることで避難者の無原則な場所取りを防ぐこともできる。
反響大きく住民の主体者意識高まる
計画は、昨年の4月から8月までの間に各校区の学校と地域が話し合いを重ね、一緒に作ってきた。「押し付けだと地域は受け入れがたい。合意の上で事前にルール作りをし、学校再開までを考えた計画を作れば授業もスムーズに再開できるし、避難所のスタートも全然違う」(同課)。
計画策定後、災害時の実効性を高めるための取り組みが多くの地域で始まった。防災学習会やHUG(避難所運営ゲーム)の開催をはじめ、学校と自治会で学校周辺のフィールドワークを行い、ルールの確認や車の進入路を検証する動きも。こうした各学校の状況に即した避難所利用計画作りを通して、「自分の学校ではこうした方がいいという“気付き”が出てきて、住民の主体者意識も高まってきた」(市教育委員会)という。
学校現場においても「意識の高い職員をどれだけ育て、全体に広げていくかが大きな課題」との観点から、これまでも市防災危機管理課と連携し、全小中学校の安全主任や校務主任を対象にした研修を実施。実際の避難所を体験した職員が講師となり、学校が避難所になった時のイメージトレーニングなどを行ってきた。2020年度も引き続き研修会を実施する予定だ。
計画策定については、公明党の沢田市議が昨年の3月議会で質問。「いつ来るか分からない地震に対してBCP(事業継続計画)の視点で取り組むべきだ」と主張し、学校施設の利用計画を全校で一斉に進めるよう提案。また、全校作成が実現したことを受け、昨年12月の議会では計画を実効性のあるものにするよう求めるなど、一貫して推進してきた。