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太陽のひと 情熱地方議員
かけがえのない宝は近くにある
地平のかなたまで広がるヨシ原を涼やかな風がなでていく。緑の波間から時折、エゾシカが顔をのぞかせる。日本最大の湿原と雄大な蛇行河川で知られる釧路湿原。
約6000年前、北海道東部にあるこの場所は海だった。海水が後退し、枯れた植物が積み重なることで現在の泥炭地が形成された。国の特別天然記念物・タンチョウをはじめ、希少な動植物を育む“母なる大地”だ。
誰もが憧れるかけがえのない自然環境は、住民らの保護活動によって守られてきた。ラムサール条約湿地の登録、国立公園の指定を経て、住民は“地域の宝”と誇る。
大自然と人々の暮らしが隣り合う地域で、環境保護にも暮らしの向上にも全力投球する公明党の地方議員がいる。5期19年、釧路市議を務めている松橋尚文(59)だ。
「あの人、ちっとも『議員』らしくないんだよ」。親愛を込めて周囲はそう語る。裏表がなく穏やかな人柄。彼の周りには笑顔の輪が広がっている。
自然が好き。人が好き。笑顔が〝ごちそう〟
北海道釧路市 松橋尚文 議員
道外の写真家やキャンパーを案内することもある松橋。「皆さんもぜひ、足を運んでみて!」=JR細岡駅の近くで
公明党の釧路市議・松橋尚文(59)は、釧路の自然が好きだ。趣味は、父に教わった山菜採りや魚釣り。母もまた、花が好きな人だった。自然への愛があふれ、松橋が自然を守るようになった原点は38年前。道外の高校生が、地元民が捨てたであろうごみを拾う姿を目撃したことだ。「情けなく、申し訳なく思った」。以来、ごみ拾いはライフワークになった。
ボランティア仲間の千田大さん(左)と釧路湿原道路のごみ拾い。30分ほどで30リットルの袋三つがパンパンに
夏の釧路湿原は、太陽を浴びた緑の濃淡が輝きを増す。美しい景色を楽しむのもつかの間、ズラッと並んだメガソーラー(大規模太陽光発電所)が目に飛び込んだ。松橋が説明する。「釧路湿原国立公園と市街地の間の『市街化調整区域』には、自然公園法の規制が及ばない」
釧路湿原は、豊かな生態系が国際的に認められ、1980年に日本初のラムサール条約湿地に登録。87年には湿地単独で初の国立公園に指定された。4市町村にまたがる区域は計288平方キロメートルという圧巻のスケールを誇る。その周辺で近年、メガソーラー開発が急速に進む。広大な平地と長い日照時間が呼び水になった。
法律で定められた許可を得ずに開発を進める事業者まで現れた。「市街化調整区域には、絶滅危惧種のキタサンショウウオが多く生息している」。そう嘆き、眉をひそめるのは、釧路自然保護協会の神田房行会長。希少な生態系が脅かされている事態を、いち早く察知した松橋は、市議会公明党や公明党道議の田中英樹、そして地域住民と緊密に連携し、行政を動かした。
2025年3月の市議会。松橋は市に対し、自然と調和しないメガソーラーの設置を望まないとする「ノーモア メガソーラー宣言」を提案し、同6月に実現。同9月には、今年1月以降の着工分から市長の許可制とする条例を結実させた。神田会長は「本当に力になってくれている」と厚い信頼を寄せる。
アイヌ語で“湿原の神”と尊ばれるタンチョウ。田中道議(左)らと保護活動に励む=阿寒国際ツルセンター
松橋は、人が好きだ。天性の温かさとユニークな人柄は、SNSなどネット上の交流でも発揮される。ブログは初当選1カ月後の2007年5月から、ほぼ毎日更新。SNSでは知り合いの投稿に積極的に反応する。
自らの投稿は「冷やし中華が嫌いだ」「私が洗車するとなぜか雨が降る」など、ありのまま、飾らない気持ちを記す。雨が降ると「松橋さんが洗車したのかな?」と、閲覧者が松橋を思い浮かべるようになる。松橋は語る。「SNSは、S極とN極で“磁石”だと思っている。人と人を引き寄せ、実際に会わなくても関係は深められる」
事実、ネットから生まれた縁は多い。阿寒国際ツルセンター「グルス」の館長で写真家の河瀬幸さんは、その一人。タンチョウへの人工給餌発祥の地で、保護や情報発信を担う。きっかけは、河瀬さんがセンターを運営する苦悩をつづったブログを読み、状況を聞きに会いに行ったことだ。今ではすっかり気心の知れた仲。河瀬さんは「“まっちゃん”と呼べるほど距離が近くて。困った時にはすぐ相談できる。行政との橋渡し役に徹し、要望が通るか真剣に模索してくれる」と話す。
SNSを通じての市民相談もある。「老朽化した和式トイレを改善してほしい」。場所は、野球少年らが汗を流す新釧路川緑地。松橋は23年12月の議会で訴え、24年にトイレは洋式へ更新された。相談者の寺山博道さんは、取材時に初めて松橋と対面し「相談して良かった」と打ち明けた。小学校6年生の球児・渡部塁翔くんは「安心して使える」と笑顔を見せた。
市内の高齢者施設で手品を披露。アタッシェケースにはトランプやスプーンなどの小道具が。本人いわく「私は『ミスターナオック』です!」
控えめに言って、松橋は多忙だ。議員活動に加え、地元の町内会長も担う。趣味のギター演奏や手品を生かした慰問活動にも精を出す。妻の直子さんは「もうすぐ還暦なんだから、体に気を付けて」と気をもむ。
松橋の底知れぬバイタリティーには驚かされる。活力の源を聞いた。「皆さんの笑顔が何よりの“ごちそう”だ」
確かに、松橋の周りは笑顔であふれている。なぜだろう。地元の昭和南6丁目で、町内会長としての松橋を間近で見てきた、野中保宏さんはこう評する。「松橋さんは、児童生徒の登下校の見守りや古紙回収、夏祭りなど何でも率先してやる。たとえ一人でも、文句を言っている姿を見たことがない」
松橋を慰問活動に誘った「Communication space HOBO.」の大河内明彦さんは「人のことを喜ばせたいという心根がないと慰問は続かないが、松橋さんは努力を惜しまない。完璧じゃないけど、だからこそ人間味がある。そこが魅力」とリスペクト(尊敬)の気持ちを言葉にする。
松橋は、おごらない。公明党地方議員としての使命を自覚しているからだ。「住民の一番近くで働ける分、動けば動くほど地域が良くなる。やりがいがある。人と自然の魅力があふれるこの場所で『大衆とともに』との立党精神を果たし抜く」
文・渡口政樹、写真・江田聖弘、レイアウト・向井慎、デザイン・遠藤勇気 釧路湿原の写真はドローンで撮影











