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2026年8月5日

ユース世代を支える“街の保健室”

心身の悩みや性の問題などに対応 
名古屋市立大学大学院・日吉和子 研究員に聞く

若者が心身の悩みについて気軽に医師などの医療従事者に相談できる医療機関「ユースクリニック」。日本でも自治体運営型や民間の産婦人科クリニックなどで増えてきています。そこで、ユースクリニックの普及をめざして行政と連携する、名古屋市立大学大学院医学研究科の日吉和子研究員(医学博士)に話を聞きました。

専門職へ気軽に相談、広がる安心
幸福度低い若者の今/孤立・孤独が背景に

――ユースクリニックとはどのような場所で、なぜ今、必要とされているのか。

日吉和子研究員 日本で私たちが行っているのは、若者が心身の悩みや性に関する多様な問題を、無料で医療従事者に相談できる“ユースのための街の保健室”のような場所です。

日本の若者は、身体的には健康なものの精神的な幸福度が低く、自殺率はフランスの約2~3倍に上るという深刻な現状にあります。

理由は、学校や家庭、健康、人間関係といった複数の問題が重なって生じることが多く、その背景には孤立・孤独があります。SNSでつながっていても心を許せる相手がいるとは限らず、調査では家族に打ち明けられない若者が約40%に上ることが報告されています。家族にも学校にも相談できない若者を支えるためには、安心して相談できて、必要に応じて医療機関などにつなぐ地域の受け皿の整備が重要です。

――若者支援に取り組む原点は。

日吉 私自身、貧困世帯で育ち、進学の際も自力で学費を工面するなど、社会の経済格差を肌で感じてきました。看護師を経て研究者となり、当初は高齢者虐待の予防を研究していましたが、突き詰めていくと、その根源には幼少期の過酷な成育環境にも原因があることが分かったのです。

「死にたい」「眠れない」といった深刻な状態になってから相談に来る若者を見るたび、「もっと早い段階で介入できていれば」と痛感しました。そのため問題が深刻化する前に、私たちが地域へ出て若者の声を直接聴く環境をつくろうと考えたのが、今の活動の原点です。

相手を絶対否定せず/寄り添う伴走型支援

――現場ではどのような支援を展開しているのか。

日吉 兵庫県尼崎市や京都市などで4行政と連携し、実践の場を研究費で運営しています。若者が「行きたい」と思ったタイミングを逃さないよう、予約なしで受け入れているのが特徴です。

また、施設で待つだけでなく、夜の街に出向いて若者に無料で食事を配るアウトリーチ活動も始めました。そこで見えてきたのは、食事を抜くなど食べ物に困っている若者が想像以上に多いという実態です。私たちが現場で最も大切にしているのは、「相手を絶対に否定しないこと」です。自分の価値観でジャッジせず、一人の人間として全てを受け入れます。

日本の若者は自分で選択することに慣れていないため、単に私たちが助言するのではなく、寄り添いながら自己決定できるよう一緒に考えていく「伴走型」の支援を心掛けています。

持続可能な予算必要/政治の力で制度化を

――全国へ普及させていくためのポイントは。

日吉 最大のハードルは、人件費などの予算です。国が主導して全国に「ユースセンター(若者の居場所)」を作ろうとしていますが、そこに併設する形でユースクリニックを設置し、分かりやすく看板を出してほしいと国にも要望しています。

また、若者を否定せず一人の人間として受け入れる「トラウマインフォームドケア」を実践できる医療従事者の育成が急務であり、そのための教育プログラムを作っているところです。

――公明議員に要望したいことは。

日吉 公明議員の皆さんには、子育てや若者の支援についてお話しすると、すぐに動いてくださり本当にありがたく思っています。

ぜひお願いしたいのは、ユースクリニックをしっかりと「制度化」し、市町に1~3カ所は当たり前にある状態を作っていただくことです。

議会などで取り上げていただく際、各自治体における中高生や20代の自殺者数、自殺率、不登校児の数、児童虐待相談対応件数、若者の中絶者数といった客観的なデータを裏付けとして示し、まずは現状の深刻な課題を行政に強く認識させてほしいと思います。

また、自治体によって「自殺予防」の枠組みなのか、「子ども支援」で扱うのかなど、所管する部署が曖昧になりがちです。行政の中で、明確な位置付けと予算化の推進を議会から後押ししていただきたいです。

何度でもやり直せる/SOS出してほしい

――最後に、読者や社会に向けたメッセージを。

日吉 日本は、一度王道のルートから外れると復活できないと思い込んでしまう「排除社会」の側面があります。そのため親の責任は重くなるのですが、親ばかりが問われる社会ではなく、親自身もサポートされ、子どもたちが自分の生きたいような未来を選択できる社会になってほしいと願っています。

今、しんどい思いを抱えながら声を上げられない若者たちには、「SOSを出していいんだよ。信頼できる人に『しんどい』と伝えてほしい」と強く呼び掛けたいです。

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