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【主張】地方の人口減対策 女性活躍の視点が欠かせない
どうすれば若い世代を呼び込むことができるのか。人口減少が著しい地方が抱える課題に官民挙げて取り組む必要がある。
1月末に公表された2019年の人口移動報告で、埼玉、千葉、東京、神奈川で構成する東京圏は、転入者が転出者を14万8783人上回る「転入超過」だった。東京圏の転入超過は24年連続で、超過分の約9割は15歳から29歳までの若い世代である。
このままでは地方は衰退するばかりだ。東京一極集中を是正し、地方創生につなげなければならない。
ここで注目したいのは女性の動向である。政府の分析によれば、地方出身の女性は進学や就職でいったん東京圏に転入すると定着する傾向が男性に比べ強く、結婚・出産後も地元に戻る動きが少ない。
理由は幾つか挙げられているが、見過ごせないのは、地方から東京へ転入した女性の多くが、出身地に対しマイナスのイメージを持っていることだ。
具体的には、地元企業に対し、「将来性が見込めない」「希望する仕事がない」「責任ある仕事を任せてもらえない」「賃金が低い」といったイメージを持つ女性が多い。これでは、地元に戻ることをためらうのも無理はない。
女性が住むことを敬遠する地域に、男性や子育て世帯が積極的に移住することは考えにくい。従って、女性が活躍できる環境を整えることが、地域の将来にとって極めて重要であることは明らかだ。
既に、対策に乗り出している自治体は少なくない。
例えば香川県は、地元の企業や大学などと連携し、女性のための出張労働相談会や、県内で活躍する女性研究者らと女子中高生との交流イベントなどを開いている。長崎県諫早市は「女性起業塾」を開講して仕事で独立したい女性をサポートしている。
こうした事例を広く共有しながら、地域の特色を生かした取り組みに知恵を絞る必要があろう。
国も男女共同参画基本計画で、地方創生における女性の活躍推進を掲げ、地方の取り組みを交付金などで支援している。若者に魅力ある地域づくりに向け、自治体との連携に一層努めてほしい。