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妊産婦・乳幼児の「専用避難所」を
災害発生時に自治体が設置する避難所には、高齢者や障がい者ら要配慮者を受け入れる「福祉避難所」があるが、中でも、整備する自治体が広がりつつあるのが、妊産婦や乳幼児の安全確保などに特化した母子専用避難所だ。2024年の能登半島地震の際には、石川県輪島市が2カ所に設置した。整備の意義などについて、産婦人科医で神奈川県立保健福祉大学教授の吉田穂波氏に聞いた。
母子の声に耳傾け対応
交流生まれ不安の緩和も
能登地震では
母親と共に身を寄せていた子ども同士が額を寄せ合って遊んでいた。24年1月1日に発生した能登半島地震で、同10日から石川県輪島市が保育施設に開設した母子専用避難所の光景だ。
同市は、市内に設置した11カ所の福祉避難所のうち、2カ所を母子専用避難所として開設。必要な物資や医療サービスが迅速に提供できるよう開設された同避難所は、延べ729人の母子が利用した。同年代の子どもを持つ母親同士など、置かれた状況の近い人々が集まったことで交流が生まれ、不安を緩和する役割も果たしたという。
市担当者は、避難所の収容可能人数の5倍に近い約1万3000人が避難したことに触れ「一般の避難所では妊産婦らの細かなニーズが埋もれてしまう恐れがあった。専用避難所を設けたことで、母子の声に耳を傾けて対応できる体制が確保できた」と振り返る。
新生児用品など幅広く備蓄
東京・文京区
母子専用避難所を全国で初めて整備したのが東京都文京区だ。区議会公明党も推進し12年から、区内4カ所の私立大学を専用避難所に指定している。
備蓄庫には、非常食や毛布など一般的な備蓄品とは別に、急な出産に対応できるよう非常時用の分娩セットを備えている。アレルギー対応粉ミルクや紙おむつ、すぐに使える哺乳瓶、ベビーベッドなど新生児用品も幅広くそろえる。
助産師らが巡回
同避難所には、助産師会などの協力を受け、助産師、看護師、医師らが専用避難所を巡回するという。妊産婦が相談しやすい体制をめざす。
同区の矢部裕二防災危機管理課長は「避難所で妊産婦は、子どもの夜泣きなどで肩身が狭い思いをしがちだ。母子専用とすることで、少しでも不安を軽くできれば」と語る。
政府は、各自治体に母子専用避難所の設置を要請するには至っていないが、避難所で生活する妊産婦や乳幼児に焦点を当てた手引書となる「支援のポイント」をまとめ、活用を呼び掛けている。この中では、避難所での生活は子どもが泣き止まず周囲に気を遣う場合があるとし、「こどもを持つ家族の部屋を用意し、ストレスを和らげるためにこどもを遊ばせる時間を作るなどの環境調整をする」よう促している。
公明が推進、各地で広がり
公明党はこれまで、国と地方のネットワークを活かし、福祉避難所の整備や新生児用品の備蓄などを一貫して推進してきた。母子専用避難所については、党地方議員の奮闘で、全国各地で広がりを見せている。
党復興・防災部会長の佐々木雅文参院議員は「我慢を強いられがちな避難所生活においてこそ、被災者の尊厳とウェルビーイング(心身の健康や幸福)を保つ工夫が不可欠だ。今後も地方議員と密に連携し、母子専用避難所の普及などを加速させたい」と語る。
支援の遅れ防ぎ命守る
神奈川県立保健福祉大学 吉田穂波 教授
妊産婦は全人口のわずか約0.6%で、産後間もない母子は圧倒的な「少数派」だ。しかし、支援の遅れが命に直結することを忘れてはならない。東日本大震災では、0歳児の死亡率が平時の約6倍に跳ね上がった。
妊産婦が抱えるニーズは幅広く、妊娠週数や年齢、初産か経産かなど一人一人の状況によって異なる。1カ所に集まり、個々に応じた支援を提供しやすい母子専用避難所を設ける意義は大きい。
一般の避難所では、妊産婦は周囲への気兼ねから助けを求められず孤立しやすい。そうならないよう、専用避難所の整備と併せて地域全体で進めていきたいのが、自ら助けを求める「受援力」の向上だ。
頼ることを通じて人とつながることにもなり、平時から頼り合える地域づくりが、そのまま災害時の力にもなる。
専用避難所の整備は、次世代の命を守ることにほかならない。各自治体には、平時からの子育て支援などの延長線上にあるものと捉えて取り組んでもらいたい。









