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気候変動がもたらす健康への脅威
党東京都本部女性局の会合から<講演要旨>
東京科学大学教授・藤原武男氏
公明党東京都本部女性局(局長=竹平智春都議)は2月28日、新宿区の公明会館で「女性の健康週間」(3月1~8日)を記念した講演会を開催し、「気候変動と健康」をテーマに東京科学大学の藤原武男教授から話を聴きました。その要旨を紹介します。
全人類共通の課題に
活発に開催された党東京都本部女性局の講演会=2月28日 公明会館
気候変動による気温上昇のペースは自然変動を超えており、人間の活動が原因であることは疑いの余地がありません。この気候変動は地球上の全員が逃れることのできない「健康上の課題」です。とりわけ、生活が苦しい方や、体力的に弱い子ども、高齢者に大きな負荷がかかっていることが分かってきています。
気候変動が健康に悪影響を及ぼす理由として、大きく四つの点が挙げられます。
一つ目は、全員が影響を受けることです。気温や海面水温の上昇によって生態系が変化し、感染症のリスクや採れる食料も変わってきます。
二つ目は、医療システムへの圧迫です。熱中症やぜんそくで救急搬送・入院が急増すると病床が埋まり、がんの手術など予定されていた通常の治療が遅れてしまいます。
三つ目は、子どもへの長期的な影響です。妊娠期や子どもの頃に厳しい暑さにさらされると、体をつくる大事な時期の成長が阻害され、大人になってからの健康にも悪影響を及ぼします。
最後に、健康格差の拡大。熱中症の発生リスクが最も高いのは「都市部の貧困地域」であり、最も苦しい状況にある人が気候変動の負担を負わなければならないという「健康格差の拡大」も引き起こします。
実際、二酸化炭素を減らさず、化石燃料に依存したまま気温が大幅に上昇した場合のIPCC(世界各国の専門家が参加する「気候変動に関する政府間パネル」)のシナリオでは、熱中症患者が現在の何倍にも増え、日本の医療現場で受け入れ切れなくなる恐れがあります。
温暖化対策を進めたシナリオであっても、2100年には日本の平均気温が30度近くに達し、熱中症のリスクが現在より1.1倍(10%)上がると予測されています。日本全体で10万人が熱中症で救急搬送されると仮定した場合、新たに1万人もの救急患者が増える計算となり、日本中で膨大な数の患者を受け入れる医療体制が必要になります。
ぜんそく、川崎病、メンタル… 子どもが受ける影響深刻
特に子どもへの影響は深刻です。汗をかくなどの熱への適応システムが未発達であり、外での活動量も多いため、大人以上に熱の影響をダイレクトに受けます。最新の研究では、気温が高いと子どもの脳の神経ネットワークのつながりが弱くなるという報告も出ています。
暑さは胎児期にも影響し、早産のリスクを「約1.1倍」高めます。これは、暑さによる脱水で子宮への血流が減ることなどが原因と考えられています。
気候変動対策を導入しない場合、将来の人口減少を考慮しても、気管支への刺激や、花粉などのアレルゲンの増加により、ぜんそくによる入院患者数は現在の約4倍に跳ね上がると予測されています。
川崎病や糖尿病、自己免疫疾患などのさまざまな病気も、暑さによる脱水や免疫系の異常によってリスクが上がると考えられています。
さらに、影響は身体だけにとどまりません。極端な暑さはメンタルヘルスを悪化させ、自殺者を増やすというデータもあります。
一方、気候変動に対する強い不安を抱える人も増えており、暑い日が増えるほど、高齢者の認知症の発症リスクも上がることが分かっています。
福祉などあらゆる分野に“横串”で対策進めよ
気候変動は決して遠い国の話ではありません。調査によると、約44%の人が「必要な食料が買えなかった」という経験をしており、こうした食料危機を経験した人ほど気候変動対策を支持する傾向があります。このように、身近な食料品の高騰と気候変動をつなげて考えることが重要です。また、気候変動について、同じグループや身近な人たちと日常的に話し合うことも有効な対策への一歩となります。
これからの社会づくりにおいて、気候変動対策を行政の一部の環境部署だけの問題にするのではなく、都市計画、医療、福祉、教育など、“横串”であらゆる分野の政策に組み込んでいく必要があります。
自身が気候変動への関心を高め、二酸化炭素を減らす根本的な対策を進める政治家を後押ししていくことが、子どもたちの未来を守ることにつながります。
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