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コラム「北斗七星」
強く豊かな国もいい。でも、ちょっとしたことで心が温まる社会でもありたい◆月刊誌『ラジオ深夜便』2026年2月号で、NHKの元アナウンサー・山下信氏のエッセー「乗り合いバスの降車ボタンを巡るお話」を読んだ◆山下氏が東京の渋谷駅から新宿駅西口に向かうバスに乗車した時のこと。途中から幼稚園児と思われる男の子と母親が乗ってきた。中ほどの席に座った親子。母親はしきりに「やめなさい。降りる人がいないのにバスは止まるのよ」と話し、男の子は「一度だけだから押してもいいでしょ」と。このやりとりが停留所を過ぎるたびに聞こえてきたという◆15人ほどの乗客はその成り行きに興味津々。終点の一つ手前の停留所を過ぎた時だった。運転手が「ぼく、お待たせしました。ボタン押していいよ」と呼び掛けると、次の瞬間、バスの車内に「ピンポン」が鳴り響いた。降車の際には親子が運転席に来て感謝を述べ、男の子は運転手とハイタッチ。乗客もみんな笑顔になったと結ぶ◆〈おさなごがビールの缶を抱きしめて/ぷはっと笑う/それは私か〉。子育て歌集にある歌人・俵万智さんの歌。子どもは親の言う通りにはしない。親のする通りにする。思わず笑い納得。(鷲)









