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軽減税率 申告納税事務Q&A(事業者向け)
消費税の軽減税率実施によって、事業者の申告納税事務はどう変わるのか。日々の業務で必要なことなどについて、Q&Aで税理士の熊田士城さんに解説してもらいました。
Q 事業者の申告納税事務は、どう変わりますか?
A 税率ごとに区分して記帳を行った上での申告、納税が必要
Q 軽減税率の実施によって事業者の申告納税事務はどう変わりますか?
A 事業者は、売上げや仕入れ、経費を税率が異なるごとに区分して記帳し、消費税及び地方消費税の申告と納税を行うことが必要となります。
軽減税率の対象となる飲食料品等を取り扱っている飲食店等だけでなく、その他の事業者においても日々の取引で軽減税率の対象となる取引がある場合には税率ごとに区分して記帳することが必要です。
Q 免税事業者の対応は?
A 免税事業者については、消費税及び地方消費税の申告と納税が不要であるため、税率ごとの区分経理をする必要はありませんが、取引の相手先から「軽減税率対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込金額」を記載した請求書等の交付を求められる場合があります。そのような場合を想定した準備をしておくことが望まれます。
Q 日々の業務で必要なことは?
A 請求書や領収書にも税率ごとに区分した合計税込金額を記載
Q 日々の業務で必要なことは?
A まず軽減税率対象品目の取引があるか確認します。軽減税率の対象となるのは、飲食料品(酒類、外食を除く)と週2回以上発行される新聞で定期購読契約に基づくものです【上の表参照】。
売上げ、仕入れ(経費)の別に次のような対応が必要です。
(1)売上げ
軽減税率対象品目の売上げがある場合には、既存の請求書や領収書等に「軽減税率対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込金額」を追加記載して、取引先に交付することが必要です(令和5年10月1日から請求書等の記載事項はさらに変更されます)。
例えば、飲食店を営む事業者が、発行する領収書等の中に、標準税率(10%=店内飲食)と軽減税率(8%=持ち帰り)が混在する場合には、店内飲食(10%)の合計額と持ち帰り(8%)の合計額を区分して記載し、持ち帰り(8%)については軽減税率対象品目である旨を記載する必要があります。
また、日々の売上げを帳簿等に記帳する際にも、店内飲食(10%)と持ち帰り(8%)に分けて記帳することが必要です【下の図参照】。
(2)仕入れ(経費)
軽減税率対象品目の仕入れがある場合には、請求書、領収書等を確認し、税率ごとに区分して帳簿等に記帳します。
経費についても、「残業をしている従業員のために出前を取った」「打ち合わせ時に出すお茶をコンビニで買った」「取引先へのお歳暮用にデパートでお菓子を買った」といったような取引には軽減税率が適用されるため、領収書等をよく確認し帳簿等に記帳します。
Q 日々の業務で必要なことは?
A 請求書や領収書にも税率ごとに区分した合計税込金額を記載
Q 税率を区分して記帳することが難しい場合は?
A 売上げや仕入れ、経費について、税率ごとに区分して合計することにつき困難な事情(※)がある中小事業者については、一定期間、次のような税額計算の特例が設けられています【上の図参照】。
ここでいう中小事業者とは、基準期間(原則として、個人事業者の場合は課税期間の前々年、法人の場合は課税期間の前々事業年度)の課税売上高が5000万円以下である事業者をいいます。
売上げにつき区分が困難な場合には次の特例があります【上の図上段参照】。
(1)小売等軽減仕入割合の特例
卸売業・小売業に係る課税売上げ(税込)に、小売等軽減仕入割合を乗じた金額を軽減税率対象品目の課税売上げ(税込)として売上げの税額を計算します。
(2)軽減売上割合の特例
課税売上げ(税込)に、軽減売上割合を乗じた金額を軽減税率対象品目の課税売上げ(税込)として売上げの税額を計算します。
(3)(1)及び(2)の割合計算が困難な場合
先に示した(1)及び(2)の計算において使用する割合に代えて50%の割合を使用して売上げの税額を計算します。
仕入れ、経費につき区分が困難な場合には次の特例があります【上の図下段参照】。
(1)小売等軽減売上割合の特例
卸売業・小売業に係る課税仕入れ(税込)に、小売等軽減売上割合を乗じた金額を軽減税率対象品目の課税仕入れ(税込)として仕入れの税額を計算します。
(2)簡易課税制度の届出の特例
簡易課税制度を適用しようとする課税期間中に届出書を提出すれば同制度を適用できます。
簡易課税制度とは、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とする制度です。
この制度を適用した場合には、原則として、2年間継続して適用しなければなりません。
※困難な事情とは、例えば、軽減税率に対応したレジの導入に時間がかかり売上げを区分して管理することができなかった等、困難の度合いは問わないこととされています。