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「八戸の3・11忘れない」
公明推進の津波伝承施設
音と映像で当時を体感
市民へ教訓と防災意識を啓発
青森県
津波で打ち上げられた大型漁船=2011年4月1日 青森・八戸市
青森県八戸市では、東日本大震災の記録をとどめ、“記憶の風化”を防ぐための施設「市みなと体験学習館」が、昨年7月のオープン以来、多くの市民や児童らに利用されている。整備を推進してきた八戸市議会公明党の夏坂修、中村益則、高橋正人の各議員はこのほど、同館を訪れ、利活用の状況などを視察した。=東日本大震災取材班
小学校の研修授業で活用も
北海道から関東地方までの太平洋沿岸に甚大な被害をもたらした東日本大震災の巨大津波。青森県の太平洋側にも押し寄せ、八戸市は6メートルを超える津波に見舞われた。大型漁船が陸に打ち上げられ、防波堤や魚市場が損壊。市の基幹産業である水産業が大打撃を受け、住宅被害も相次いだ。
“あの日”の爪痕が姿を消しつつある中、鉄筋コンクリート2階建ての旧八戸測候所を市が改修・整備したのが、みなと体験学習館(愛称・みなっ知)。1階は、防災学習フロアで、入り口の「震災タイムトンネル」では3.11当時の状況を映像と音響で体感できる。
トンネルを出ると東日本大震災を中心に、八戸市の過去の災害を学べる展示コーナーや、2011年3月11日前後の新聞記事のスクラップが並ぶ。このほか、市の防災マップや非常食セットなど、個人が災害に備えるための防災グッズの確認ができる内容を展示。
2階には、市の歴史や文化を大型スクリーンで体感できるゲーム、防災食のパンや牛丼が食べられるカフェもあり、“冷たいままでもおいしいカレー”が人気を集めている。
この施設は海抜27メートルにあることから、津波襲来時の垂直避難場所に指定され、毛布や水、食料を600人分備蓄している。また、東北の産学官民の連携による「3.11伝承ロード」の震災伝承施設としても登録。24日現在、市内の小学生を対象に23校890人が研修授業を受けた。
公明議員OBもガイド
「みなっ知」のガイドとして、来館者に当時の状況などを伝えているのは、19年に勇退した元公明党八戸市議の前沢時広館長だ。震災時、住民の安否確認や被災者支援に奔走した。
前沢館長(左端)と市職員(手前)の案内で館内を視察する(奥右から)高橋、中村、夏坂の各議員
公明議員3氏との懇談の中で前沢館長は、「ここで体験授業を受けたある児童が、防災マップを見て『家のところが赤くなってるから逃げないとね』と話していた」ことを紹介。「市民が『八戸の3.11』を忘れないように、教訓の場として活用してもらいたい」と力を込めた。これに対し、夏坂議員らは「今後は防災機能の拡充など、しっかり後押ししていきたい」と語っていた。
この日、来館した市内在住の河内美子さんは、「あのときは自宅の1階が津波にのまれ、家電が泥だらけになって使えなくなりました」と述懐。「娘は当時2歳だったので教訓を伝えます」と話していた。