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温暖化対策 加速へ
石炭火力、新増設禁止を
防災・減災 21年度以降も拡充必要
衆院本会議で斉藤幹事長
衆院は23日、本会議を開き、安倍晋三首相の施政方針演説などに対する各党代表質問を行った。公明党の斉藤鉄夫幹事長は「脱炭素社会構築に向け、2050年を視野に温室効果ガス排出を実質ゼロにすべき」と強調。石炭火力発電の新増設禁止などを訴え、地球温暖化対策の加速を促した。また、防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策が20年度に最終年度を迎えるとして「21年度以降の対策拡充を」と要請。人生100年時代へ、介護予防・健康づくりの強化なども訴えた。
【気候変動】斉藤幹事長は、気候変動を「気候緊急事態」と捉えた温暖化対策の加速が重要と強調。50年を視野に温室効果ガス排出量を実質ゼロにするため「石炭火力発電の新増設は禁止するなど思い切った対策が必要」と訴えた。
エネルギーの安定供給の観点から、温室効果ガス無排出・低排出のエネルギー源の最適な組み合わせについて、冷静な議論が必要と指摘。革新技術などを通じて「エネルギーの転換・脱炭素化を追求すべきだ」と力説した。安倍首相は、再生可能エネルギーの主力電源化などを進める考えを強調。日本として脱炭素社会の実現に挑み、「世界における気候変動対策をリードしていく」と答えた。
【防災・減災・復興】斉藤幹事長は、相次ぐ自然災害に触れ、「一日も早く安心した暮らしを取り戻せるよう、きめ細かな支援を」と強調。20年度が最終年度となる「防災・減災、国土強靱化3カ年緊急対策」に関して、「インフラの老朽化対策も含めた21年度以降の緊急対策の拡充と継続を」と訴えた。
安倍首相は「21年度以降も必要な予算を確保し、オールジャパンで災害に強いふるさとをつくる」と答えた。
東日本大震災からの復興に向けて斉藤幹事長は、復興庁の設置期間延長など、万全な体制構築を求めた。
介護予防で「通いの場」活用
【全世代型社会保障】斉藤幹事長は「人生100年時代を見据えると、健康寿命の延伸が大きな課題だ」と主張。介護予防・健康づくりの強化に向け、高齢者が地域で集まって運動や趣味などを楽しむ「通いの場」の効果的な実施を促した。高齢期の長期化などに対応した年金改革や認知症施策の充実、がんの痛みを取り除く緩和ケアの浸透も訴えた。
公明党の推進で20年度税制改正に盛り込まれた、未婚のひとり親への寡婦控除適用については、制度設計に万全を期すよう求めた。安倍首相は「改正法案の成立後、(制度の)周知徹底を図る。また、控除の申告の際に婚姻歴の有無が職場などに知られないよう、プライバシーに配慮した制度設計に努める」と答えた。
原爆遺構の保存支援訴え
【原爆遺構保存】斉藤幹事長は、広島・長崎への原爆投下から今年で75年を迎えることに言及。広島に残る最大級の被爆建物「旧広島陸軍被服支廠」の保存に向けた支援を求めた。安倍首相は「広島県の議論を踏まえて国としてしっかり対応する」と応じた。
【中小企業など】斉藤幹事長は、後継者未定の中小企業の事業承継に向けて「第三者への承継支援を抜本的に講じるべき」と強調。またCSF(豚コレラ)対策について、野生イノシシの対策強化や発生農家の経営再開支援などに政府が全力を挙げるよう求めた。
斉藤幹事長の衆院代表質問(要旨)
欠かせない政治の安定
自公連立の第2次安倍政権が発足して7年。
昨年は、10月の消費税率引き上げに合わせて、公明党が導入を主張した軽減税率がスタートしました。長年訴えてきた教育の無償化も、今春には私立高校の無償化が実現するなど大きく前進しています。
2020年度の税制改正では、公明党が粘り強く主張してきた未婚のひとり親を「寡婦控除」の対象に加えることが決まりました。
こうした成果を着実に生み出す自公政権は「唯一の安定した連立の枠組みとして、揺るぎないものになっている」(中北浩爾・一橋大学教授)と確信致します。
一方で、予想を上回る速度で進む少子高齢化、年々激甚化する自然災害や厳しくなる安全保障環境など解決すべき課題は山積しています。
これらの難問克服には政治の安定が欠かせません。今こそ、自公連立政権が責任を持って、その知恵を結集し、全世代型社会保障の構築や持続可能な社会づくり、国際社会の平和と安定へ、果敢に挑んでいかなければなりません。
まずは、緩みやおごりを排し、謙虚さと誠実さを持って政権運営に当たり、国民の信頼回復に努めるべきであると強調したい。
公明党は、引き続き安倍政権を支え、国民に希望と安心をもたらすために、内外の諸課題に全力で取り組んでまいります。
防災・減災・復興
台風災害 被災者支援に全力
昨年は台風災害が相次ぎ、各地で甚大な被害が数多く発生しました。
被災地では、厳しい寒さの中、被災者の方々の健康状態が懸念されます。生活再建、農林漁業者や中小・小規模事業者などの、なりわい再建への道のりは、いまだ厳しく険しい状況です。一昨年発生した豪雨、地震被害などにおいても復興途上であり、政府においては、一日も早く、安心した暮らしを取り戻せるよう、きめ細かな支援に全力を挙げていただきたい。
公明党も、国と地方のネットワークの力を生かして、各被災地での数多くの声を取りまとめ、政府に対して2度にわたり政策提言を行いました。
補正予算案を含む新たな経済対策には、被災河川などの改良復旧を進めるとともに、被災者の生活や、なりわいの再建支援など、公明党の提言を踏まえた対策が随所に盛り込まれました。
次の台風シーズンに向けた「風水害対策」の予算も大幅に拡充しました。これらの対策を進めるため、今国会で補正予算案と来年度予算案の早期成立と円滑な執行を強く求めます。
20年度は、防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策が最終年度を迎えますが、防災・減災対策は3年で終わるものではありません。インフラの老朽化対策も含めた21年度以降の緊急対策の拡充と継続を強く要請します。
教訓踏まえた風水害対策
昨年の台風災害では、風水害特有のさまざまな課題や教訓が明らかとなりました。これらを徹底して検証し、今後の気候変動の影響による豪雨の増加などを踏まえたハード・ソフト一体の防災対策を総動員して進めていかなければなりません。
河道掘削や堤防強化、浸水想定区域やハザードマップ(災害予測地図)の策定、調節池の整備や既設ダムの機能強化・活用、市街地での内水氾濫対策など、総合的な治水対策をどのように進めていくのか。
自治体、気象台、河川事務所などの関係者が連携して、河川・気象情報の把握・発信、危険度分布の普及、避難情報の発令、住民避難につながる伝達なども一層の対策が必要です。
東日本大震災からの復興加速
20年度は、東日本大震災の復興・創生期間の最終年度となる重要な節目を迎えます。
東京五輪・パラリンピック大会は、復興五輪として、スポーツを通じて被災地の方々を勇気づけ、全世界に対して、復興が進む姿を発信し、感謝を伝える大きなチャンスです。何としても成功させなければなりません。
昨年、政府は「復興の基本方針」を閣議決定し、復興庁の設置期間の10年間延長とともに、21年度以降の復興・創生期間後の取り組みや組織などの方針を明らかにしました。加えて、同期間後5年目となる25年度に組織のあり方や復興事業などが再検討されることとなりました。その際には、復興の進捗をよく見極めながら、被災地の意向を十分にくみ取り、柔軟な対応を図らなければならないと考えます。
被災地の方々が安心して、将来に大きな希望を持って復興に取り組んでいけるように、今国会における必要な関連法案の提出・成立を急ぐとともに、必要十分な復興財源を確保すべきです。
環境立国
脱炭素化へ技術革新進めよ
日本のみならず、毎年、世界各地で台風、大雨、熱波や寒波などが猛威を振るい、大規模な災害が相次いでいます。人々の生活や安全を脅かすだけでなく、世界中で多くの命が奪われています。今後も気候変動の影響で台風や集中豪雨などの自然災害は、激甚化することが予想され、特に、貧困層の人々に深刻な影響をもたらすことが懸念されます。
昨年のCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)でグテレス国連事務総長は、「危険な地球温暖化を抑えられるか、今がまさに節目だ」と強調しました。地球温暖化が、このまま大きく進んでしまうかどうかの分水嶺に差し掛かっています。気候変動を「気候緊急事態」と捉え、わが国も対策を加速化させなければなりません。
その目標として、わが国は、脱炭素社会の構築に向け、50年を視野に温室効果ガスCO2(二酸化炭素)の排出を、吸収源も含めて実質ゼロにすることをめざすべきです。そのためには、温室効果ガスCO2の最大の排出源である石炭火力発電所の新増設は、禁止するなどの思い切った対策が必要ではないでしょうか。エネルギーは、あらゆる活動の基盤となるものであり、安定供給やコストの視点も欠かせません。この観点からもう一度、CO2を出さない、もしくは低排出のエネルギー源の組み合わせのベストミックスについての国民的理解を得る冷静な議論が必要と考えます。
イノベーション(技術革新)も重要です。光触媒などを活用したCO2を再利用するカーボンリサイクルの推進や蓄電技術のさらなる進展などを通じてエネルギーの転換・脱炭素化を追求すべきです。技術開発や基礎研究に携わる研究者が力を十分発揮し、この分野をめざす若者たちの能力を引き出せる環境を整えることも政治の大きな役割です。
レジ袋の有料化
プラスチックは、生活に利便性と恩恵をもたらす一方で、海洋ごみ問題が一層深刻さを増しています。発生を抑制する象徴的な取り組みとして、本年7月から、レジ袋有料化が実施されます。
消費者や事業者、特に中小・零細企業の方々が、混乱を生じないよう周知徹底をお願いしたい。また、マイバッグ持参の習慣化などを通じて、ライフスタイルの変革を促すことも重要です。
まずは国会議員が率先して取り組み、国民的な運動へとつなげていくことを提案したい。
全世代型社会保障
厚生年金の適用拡大が重要
昨年10月からは幼児教育・保育が、本年4月からは世帯の所得制限はありますが、私立高校や大学などが無償化され、全世代型社会保障への取り組みが大きく前進します。
公明党はさらに、年金、医療、介護なども含めた中間提言を取りまとめ、先月、政府に申し入れました。
年金については、短時間労働者の社会保障を充実するため、厚生年金などの適用拡大が重要です。中小企業への影響に配慮し、一定の時間をかけ段階的に対象を拡大し、併せて支援策を充実すべきです。
高齢期の長期化など人生100年時代に対応する年金改革も不可欠です。個人の選択により75歳からの受給を可能とし、その分、ひと月当たりの年金の増額や、一定の賃金を得て働く高齢者の年金を一部停止する在職老齢年金制度の見直しなどを、着実に進めていかなければなりません。
働く意欲のある高齢者が能力を十分に発揮できるよう、70歳までの就業機会の確保や、転職・副業・フリーランスなど働き方の多様化に対応し、労働法制も適切に見直す必要があります。
認知症施策の推進
人生100年時代を見据えると、健康寿命の延伸が大きな課題です。そのために特に力強く進めるべきは介護予防・健康づくりです。
その重要な役割を担うのが、高齢者が地域で集まり運動や会食、趣味などを楽しむ「通いの場」です。公明党は2年前の代表質問で、その拡充を訴えました。当時、全国に7万カ所程度だった通いの場は、現在10万カ所を超え着実に増加しています。
今後は、通いの場をより魅力的なものにするとともに、地域づくりと重なる部分も多い、「通いの場」の取り組みを、他の地域支援事業とも連携して効果的に実施し、地域包括ケアシステムの深化・推進を図るべきと考えます。
公明党は、認知症の人が安心して自分らしく暮らすことのできる地域づくりも進めてきました。中でも、「認知症初期集中支援チーム」は、早期発見・早期対応の支援体制を包括的に行う極めて重要な施策の一つであり、地方議員とも連携しながら、昨年、全ての市町村に設置されました。
今後、社会から孤立している人たちへの対応も含め、適切な医療・介護サービスなどに速やかにつなげるための取り組みを強化する必要があり、先進的な事例も踏まえたチームの質の向上が重要です。
がん対策の強化も欠かせません。その柱の一つが、がんの痛みを取り除く緩和ケアの充実ですが、いまだ現場では浸透していません。
昨年、私はこの場で、国立がん研究センターの調査結果を基に終末期のがん患者の方の苦痛からの解放を訴えましたが、この1年、具体的な対応はなされていないと聞きます。早急な対応を求めます。
がん教育については、その意義が正しく理解されていないため、自治体の取り組みに差が出ています。教育効果に地域格差が生じないよう、国の指導を徹底すべきです。また、医師などの外部講師の授業は、講師の確保が難しく、文部科学省と厚生労働省が連携して対応策を強化していただきたい。
高齢者の移動手段の確保
地方都市圏在住の75歳以上の高齢者は、半数以上が自家用車を主な交通手段としている一方、運転免許証の自主返納件数も増加傾向にあります。これを踏まえ、運転免許証を自主返納した高齢者が、自家用車に頼らず快適に移動できる交通手段の確保が重要です。
現在、政府は、高齢者の移動手段の確保に向けて、地方交付税措置を講じるなど、自治体の取り組みを後押ししていますが、今後、こうした施策を実施する自治体や事業者との連携を強化しつつ、積極的な支援を講じるべきです。電動車いすや電動アシスト自転車などの小型モビリティー(移動手段)の普及促進に向けた購入支援も必要です。
高齢運転者の交通事故対策も急務です。公明党は、昨年4月に東京都豊島区で発生した高齢運転者による母子死亡事故などの痛ましい事故が相次いでいることを受け、安全運転機能を搭載した安全運転サポート車(サポカー)などの普及促進や購入支援の必要性を訴え、「サポカー補助金」が本年度の補正予算案に1100億円程度計上されています。
普及を急速に進めるとともに、既販車に対する後付け装置の導入支援も有効と考えます。
少子化対策の抜本的な強化
少子化・人口減少は想定を上回るペースで進んでいます。子どもを産み育てやすい環境を一日も早く整備し、若い世代が結婚や出産の希望を実現できる社会をつくらなければなりません。
公明党は、児童手当や出産育児一時金の創設・拡充をはじめ、育児休業制度の充実、待機児童対策、幼児教育の無償化、母子の孤立を防ぐ子育て世代包括支援センターの設置、不妊治療への支援などに、一貫して取り組んできました。非正規雇用の待遇改善や正社員化など、若者の経済的基盤の安定化とともに、結婚や新婚生活への支援を進めてきました。
少子化対策は待ったなしです。これまでの政策を強化し、必要な財源を確保しながら、若者や子育て世代への投資を大胆に行う必要があります。
その支援策をパッケージとして、結婚・子育てを社会全体・ワンチームで応援するという、力強いメッセージを明確に発信すべきです。
女性の活躍推進
世界経済フォーラムの19年報告書では、日本の男女格差が153カ国中121位という極めて残念な結果でした。スピード感ある対策が急務です。
昨年、成立した改正女性活躍推進法では、セクハラ、マタハラ(妊娠・出産を理由に受ける嫌がらせ)などの対策強化に加え、女性の活躍に関する「行動計画の策定」義務付けの対象企業が、従業員301人以上から101人以上へ拡大されました。
女性活躍の推進には、この裾野の拡大が重要ですが、中小企業にはノウハウが少なく、行動計画策定のサポートや財政的支援などが不可欠です。
女性活躍の拡大は、多様性を認容する社会の一つの指標であり、地方議員を合わせて女性議員比率が3割を超える公明党が強力に推進する決意です。
ひとり親支援
20年度税制改正では、公明党の長年の主張が実り、未婚のひとり親を「寡婦控除」の対象に加えることが決定しました。
7年前、この問題を国会で取り上げて以来、公明党は一貫して子どもの視点に立って制度の見直しに取り組んできました。
13年に与党における検討をスタートさせ、地方議会では未婚のひとり親を寡婦控除の対象とみなして保育料などを軽減する“みなし適用”を進めてきました。その後、各種事業で“みなし適用”が全国展開され、昨年は低所得の未婚のひとり親の住民税を非課税とすることが決定。本年は、全てのひとり親家庭の子どもに対して公平な税制が実現します。
未婚のひとり親にとっては、税負担の軽減に加え、奨学金など控除後の所得によって算定される支援格差が順次解消され、経済的負担の軽減が進みます。こうした措置が、できる限り早く実施されるよう、政府の取り組みを求めます。
公明党は、ひとり親家庭の生活を支える児童扶養手当についても、公的年金との併給制限の見直しや、多子世帯への加算額の倍増、所得制限の引き上げ、支給回数の見直しなど制度の拡充を実現してきました。
障害年金を受給するひとり親については、児童扶養手当が支給されないという課題が残されており、公平性の観点から併給を可能とすべきではないでしょうか。
寡婦控除の新たな対象者への十分な周知徹底とプライバシーに配慮した制度設計を求めるとともに、ひとり親の児童扶養手当と障害年金の併給について、答弁を求めます。
力強い日本経済
中小企業 第三者の承継支援
日本経済は堅調な内需に支えられ緩やかに回復を続けています。
心配された消費税率引き上げによる影響も、軽減税率や2.3兆円の対策が功を奏し、駆け込み需要・反動減を小幅に抑え、景気の腰折れを防ぐことに成功しました。
特に軽減税率については、昨年12月にわが党が民間調査会社に委託して行った全国1万人電話調査によれば、約6割の方が「評価する」と回答し、全ての年代において「評価する」が上回りました。
その理由として最も多かったのは、「食品の税率が据え置かれて安心だから」です。軽減税率はその目的通り、国民の日々の生活に大きな安心感を与え、痛税感を和らげています。
力強い日本経済の実現へ向け、本年は、引き続き消費税率引き上げによる消費マインド(心理)に留意しつつ、特に災害からの復旧・復興、生活・なりわいの再建を急ぐとともに、海外経済による下振れリスクに対し機動的かつ万全な対応が求められます。
「総合経済対策」の迅速かつ着実な実行によって、厳しい中でも果敢にリスクを取って挑戦する方々をしっかり支え、経済好循環のさらなる拡大を実現しなければなりません。
中小企業の支援
日本経済の屋台骨を支える中小・小規模事業者の生産性向上と賃上げへの支援が極めて重要です。
公明党は、「ものづくり補助金」や「業務改善助成金」など、生産性向上を後押しする施策を強力に進めてきました。
今後は、時間外労働の上限規制や被用者保険の適用拡大なども見据え、事業者が、設備投資や従業員の賃上げに果敢に取り組めるよう、各種補助金や助成金の拡充、価格転嫁対策を含めた下請け取引のさらなる改善を行わなければなりません。
他方、事業承継も緊急の課題です。公明党は、個人保証を不要にする新たな信用保証制度の構築に取り組んできました。
今後はこれに加えて、全国に設置されている「事業引継ぎ支援センター」の機能強化を進めるなど、後継者未定の事業者が、円滑に技術や雇用を次世代に引き継げるよう、第三者への承継支援を抜本的に講じるべきです。
農林水産業活性化図れ
日米貿易協定が発効し、環太平洋連携協定(TPP11)などと合わせ、世界の国内総生産(GDP)の約6割を占める巨大な自由貿易圏が誕生しました。新たな市場拡大の好機となり、農林水産物・食品の輸出額アップと所得の増大が見込まれます。世界的な和食ブームや東京五輪大会なども追い風に、高品質な日本ブランドが世界へ広がることが期待されます。
しかし農林漁業者は、高齢化と担い手不足という難題に直面しています。需要拡大に対応した生産基盤の安定には、規模拡大だけではなく、その悩みを抱える、家族経営など中小規模の生産者への支援も重要です。
国内で豚やイノシシの病気であるCSF(豚コレラ)・豚熱が猛威を振るっています。
一方、効果的なワクチンがないASF(アフリカ豚コレラ)・アフリカ豚熱の感染が、中国や韓国などのアジア地域で拡大しています。対岸の火事とせずに、水際対策の強化と、万が一の場合には、予防的殺処分を万全の体制で実施すべきです。その際には、農家全体から理解を得るよう努めてもらいたい。
新型肺炎
水際対策の徹底に万全を
コロナウイルス対策
中国の武漢市において、新型のコロナウイルスが原因とみられる肺炎発症が相次ぎ、世界的な感染拡大が懸念されています。今月16日には、同ウイルスの感染者が国内で初めて確認されました。
中国では、今月下旬から春節(旧正月)の長期休暇に入ることから、多くの中国人観光客の訪日が予想されます。まずは、検疫所における健康状態の確認など水際対策の徹底に万全を尽くすようお願いしたい。
国際的な連携強化により、人から人への感染があり得るのかどうか、感染ルートなどを早期に解明し、それに基づいた対応策を講じなければなりません。さらなる感染拡大の防止に向けて、関係省庁が緊密に連携し万全を期すとともに、国民に対して迅速かつ的確な情報発信に努めていただきたい。
外交
中東情勢 緊張緩和へ努力尽くせ
昨年末から、米国とイランが互いに軍事攻撃を行うなど、中東情勢は高い緊張状態となっています。ひとまず最悪の事態は免れましたが、引き続き注視が必要な状況です。そのような中で首相がサウジアラビアなど中東3カ国を訪問され、地域情勢などについて意見交換し、日本の取り組みへの理解を深めたことを高く評価します。
中東地域は日本の原油輸入量の約9割を占めるエネルギー供給源であり、国際社会の平和と安定にとっても極めて重要な地域です。海上封鎖されるようなことがあれば、わが国経済にとって重大な危機です。それを防ぐためにも、米国と同盟関係を結び、イランとも友好関係にあるわが国は、緊張緩和と地域の安定をめざし、最大限の外交努力を尽くさなければならないと考えます。
自衛隊の中東派遣
日本関係船舶が昨年6月に攻撃を受けるなどの事件が相次いだことを受けて、中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集態勢の強化のため、日本独自の取り組みとして、自衛隊が派遣されます。
日本関係船舶の安全確保に役立てるため、周辺地域で幅広い情報を集める必要があります。現地周辺で活動中の米国など各国軍からの情報収集も重要です。しかし、派遣の必要性や目的、なぜ自衛隊派遣なのか、緊張状態の続く中東地域で自衛隊の安全が確保できるのかなど、国民に十分に理解されているとはいえません。政府には丁寧な説明を求めたい。
今回の派遣の根拠は、防衛省設置法の「調査・研究」であり、本来は防衛相の命令で実施できるものです。しかし、公明党の主張により、中東地域への派遣という重要性や特殊性を考慮し、閣議決定としたのをはじめ、派遣期間を1年間に限定し、延長などの際には新たな閣議決定や国会報告を義務付けるなど、しっかりと民主的な歯止めをかけることができました。
核軍縮
今年は、広島・長崎への原爆投下から75年という節目を迎えます。当事者である日本は、核兵器のない世界の実現へ、主導的役割が求められています。昨今の核軍縮、核不拡散を取り巻く情勢は、北朝鮮の核・ミサイル問題や、核兵器保有国と非保有国の見解に大きな溝があるなど、困難な状況にあります。
今年4月から5月にかけて、核兵器不拡散条約(NPT)の運用検討会議がニューヨークの国連本部で開催されます。今回は、NPT発効50年であり、日本として取り組んできた、核兵器保有国と非保有国の橋渡し役を担う賢人会議の実施や、国連総会で採択された核兵器のない世界に向けた決議の提出などが実るよう、積極的な行動が求められていると思います。
原爆遺構の保存
今、広島に残る最大級の被爆建物である「旧広島陸軍被服支廠」の解体を巡って大きな議論となっています。平和学習などに活用されてきた同建物ですが、劣化が進み、地震による倒壊の危険性があります。
そこで県は、所有する3棟について、巨額の費用がかかる保存・耐震改修はせず、2棟を解体・撤去、1棟を外観保存するとの原案を示していますが、全てを残してこそ、被爆の実相を後世に伝える訴求力があると確信します。
敷地内の他の1棟は国の所有です。そこで国として積極的に県と話し合い、貴重な被爆遺構保存に向けた支援策を打ち出していただきたい。自治体任せではなく、国がリーダーシップを発揮し、核兵器の非人道性や戦争の悲劇・愚かさを伝える平和学習拠点として活用することで、唯一の戦争被爆国である日本の姿勢を、国内外に発信すべきではないでしょうか。
安倍首相らの答弁(要旨)
【安倍晋三首相】
一、(東日本大震災の「復興・創生期間」後の体制について)復興の基本方針に基づき、今後5年間の事業規模を1兆円台半ばとし、その財源の見通しを示したところ。これらを踏まえ、今年の夏ごろに新たな復興財源フレームを定める考えだ。
一、(ひとり親支援について)児童扶養手当は、その金額を障害年金額が上回ると、受給できない仕組みになっている。児童扶養手当の受給が可能になるよう、障害年金との併給調整の方法を見直し、所用の法案を今国会に提出する予定だ。
一、(中小企業などの事業承継支援について)若い世代の承継を阻む最大の壁は、個人保証の慣行だ。この春から、先代の経営者と後継者の双方に個人保証を求める“二重取り”を原則禁止する。
一、(新型コロナウイルスについて)中国での感染拡大を踏まえ、武漢市に対する感染症危険情報をレベル2に引き上げ、不要不急の渡航をやめるよう促す。中国からの全ての航空便の機内アナウンスで、体調不良の自己申告を呼び掛けるよう各航空会社に要請する。
一、(広島の原爆遺構保存について)唯一の戦争被爆国として、日本は被爆の実相を継承する務めがある。旧陸軍被服支廠の取り扱いを検討する広島県の議論を踏まえ、国もしっかり対応する。
【赤羽一嘉国土交通相(公明党)】
一、(高齢者の移動手段の確保について)安全運転サポート車の購入や、急発進防止装置の後付け費用を補助する仕組みを補正予算案に盛り込んだ。地域のバスや乗り合いタクシーの運行に対する補助についても、20年度予算案に計上した。