公明党トップ / ニュース / p49059

ニュース

2020年1月11日

展望2020

激動する東アジア
対中、ロ 正念場の日本
東京大学大学院 川島真教授

■立ち位置の確立へ是々非々で

2020年は国際政治の面でも大きな節目になる。11月に米大統領選挙があり、英国がEU(欧州連合)からどのように離脱するのかといったことに一定の決着がつくであろう。東アジアでは台湾で大統領・議会選挙があり、選出された大統領がいかに中国との両岸関係を表現するか、ということがまず注目される。それ次第では、またそれへの米国のコミットメント次第では、国際問題の焦点になろう。

中国内部でも香港問題の帰趨が明確になっていくだろうが、何よりも大きな問題は、21年の中国共産党結成100周年に向けて、さまざまな意味での国威、党威の発揚をしていくことが予想される点だ。

この点で、目下のところ進行している米中貿易摩擦をいかに収拾させるのかが重要となる。19年12月の米中間の第一段階の合意は、中国政府にとっては朗報であった。今後とも交渉が続くであろうから、米国を保護主義だとして批判する論調は継続しているものの、それでも安堵感はにじみ出ている。

この合意は、あくまでもライトハイザー通商代表と劉鶴副首相の間でなされるものであり、両首脳の合意は最終合意まで持ち越しとなる。だが、トランプ大統領にとっては選挙の好材料となり、習近平国家主席にとっても外交危機を克服する方向性を示すことができた点で国内的にはいい材料だ。

東アジアの今一つの大きな問題は朝鮮半島だ。韓国の文在寅政権はすでに任期の後半に突入したが、北朝鮮との関係性においていかなる進展を期待し、実行に移すのか未知数だ。また米朝交渉では、19年10月の米朝実務者協議も物別れに終わっているものの、北朝鮮が、米国が対北朝鮮姿勢を改めるか否かを見極める期限を19年末に設定していることも看過できない。米国はこうした期限設定に動じることなどないだろうが、北朝鮮自身の判断で何かしらのアクションを起こしてくる可能性もある。

日本にとって、20年は正念場になる。オリンピックのこともあるが、最大の問題は、対中、対ロ関係を、適切に処理できるかという点である。20年4月には、習主席が来日する。それに向けて中国側はさまざまな要求をしてくるであろうし、安全保障や領土問題では一切譲歩しないだろう。

中国による「日本とりこみ」政策に日本はどう対処するのか。日本は安全保障問題や領土問題、そして人権問題などで、考え方を明確に示し、是々非々で対応すべきだ。経済面を重視するあまり、是々非々で対応せずに、何かしらの約束事などをしてしまうと、20年の日中関係は日本にとって悪い意味での大きな転換点になりかねない。

ロシアとの関係も同様だ。交渉の過程次第では、領土問題などについてはロシアの主張を結果的にほとんど受け入れながら、経済協力だけは行うような状態になるかもしれない。さまざまな意味で、20年はまさに東アジアの秩序、そして日本の立ち位置がどうなるのかという点で試練の年になるであろう。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

定期購読はこちらから

ソーシャルメディア