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障がい者の居場所づくり
農福連携 農家23戸に44人就農
高知・安芸市
障がいのある人たちをサポートしながら、就農を促進する農業と福祉の「農福連携」が、高知県安芸市で広がっている。同市の成功事例を踏まえ、農福連携の拡大を議会質問で訴えてきた公明党の黒岩正好県議と高木妙・高知市議がこのほど、現地の状況を視察するとともに、関係機関などでつくる「安芸市農福連携研究会」と意見交換した。
ナス農家の北村さんから状況を聞く黒岩県議(右から2人目)と高木市議(同3人目)
障がいのある人たちをサポートしながら、就農を促進する農業と福祉の「農福連携」が、高知県安芸市で広がっている。同市の成功事例を踏まえ、農福連携の拡大を議会質問で訴えてきた公明党の黒岩正好県議と高木妙・高知市議がこのほど、現地の状況を視察するとともに、関係機関などでつくる「安芸市農福連携研究会」と意見交換した。
安芸市伊尾木でナスを栽培する北村浩彦さんのハウスの作業小屋で、一生懸命に働く女性の姿があった。高知市内から通って来ている窪田和代さん。出荷するナスを5本ずつ透明の袋に入れて、30袋ずつ箱に詰めるのが仕事だ。作業が完了した箱を北村さんが確認して「はい、正解!」と伝えると、窪田さんは「やった!」とニッコリ笑った。
北村さんは今、5人の障がい者を雇用しているが、心温かなコミュニケーションを心掛ける中で、「みんな少しずつ変わってきた。親も喜んでくれて本当に良かった」と語る。今までの経過や自分の思いを綴った著書「サラリーマンから農業への転身~農福連携がもたらした夢」は12月上旬、第47回毎日農業記録賞の一般部門で優秀賞に輝いた。
研究会で協議重ね、理解広がる
安芸市での農福連携の始まりは2014年にさかのぼる。約10年間、ひきこもり状態だったある青年を、県安芸福祉保健所健康障害課の主幹・公門一也さんが、就農につないだことがきっかけだった。
障がい者や自殺未遂者など“生きづらさ”を抱えた人たちをどうしたら支援できるか。その手段を模索する中で、安芸市障害者自立支援協議会に、関係機関が連携して農業へのマッチングを進める就労専門部会が発足。連携を深める研修会などを積み重ねた結果、具体的な政策などを毎月1回協議する「安芸市農福連携研究会」が誕生した。地元のJAでも、農家と障がい者の双方に寄り添いながら、定着をサポートする「ジョブコーチ」も9月から導入している。
こうした取り組みを進める中、農家で働く障がい者が着実に増え、現在は農家23戸で計44人が就農。公門さんは、農福連携が進んだ要因として、関係機関が雇用の現場に足を運ぶとともに、農家が“生きづらさ”を理解してくれるように勉強会を重ねてきたことを強調する。黒岩県議、高木高知市議との意見交換では「障がい者にとって農業が自分の居場所になり、働くことで社会的役割を持てた。人手不足の解消にもつながっている」と語った。
また、同研究会からは、農家の理解をさらに広げることや、ジョブコーチの増員、小規模な農家も使える柔軟な支援制度などが議題に挙げられた。黒岩県議らは「障がい者に対する温かな目線と理解を持った関係者の連携が深まったからこそ、皆さんが安心して働けるのではないか」と語り、この取り組みが広がるように尽力していく考えを示した。